活性化の決め手?
医大跡に20階のホテル
         
          
県立医大跡に建つ20階のビル 和歌山城を正面にのぞむ和歌山市七番丁の県立医科大学跡で附属病院や大学校舎が取り壊されている中、跡地利用計画が着々と進んでいる。ダイワロイヤル(本社・東京)がホテルや映画館、商業施設をふくむ20階建てのビルを建設する予定で、現在、基本設計を作成中。県は県都和歌山市のランドマークとして、中心市街地の活性化に役立つと期待をかける反面、高さが82メートルと和歌山城天守閣よりも高くなるため景観に対する懸念や、活性化に疑問の声も聞こえる。

写真=2004年末に20階建てのビルが出現する)


         
【賑わい創出にポイント】
 県立医大跡については、県が1997年に希望施設などのアンケート調査を実施。それをもとに98年に跡地利用懇話会(駒井則彦会長)が検討を始め、翌99年に跡地利用に関する基本方針を策定。この中県立医大跡ビル案で、施設の必須事項として「商業施設、宿泊施設、駐車場」の3点をあげた。
 2001年に跡地利用事業計画提案競技(コンペ)を実施。当初6企業グループが応募に意欲をみせたが、実際に案を提出したのはダイワロイヤルとシーアールエス(本社・大阪)の2社。さらに、02年3月の最終審査を前にシーアールエスが辞退したため、事業計画提案競技審査委員会(日下正基委員長)は実質的に1社の案の可否を審査することになった。
 審査ポイントは、「賑わいのある街」「快適な回遊空間」「中心商業地活性化計画との連携の工夫」「経営計画の健全性」「都市型ホテルとしての充実度」「国際会議、宴会の施設」「都市圏や郊外店に対抗できる集客力のある商業施設」「周辺商業施設と共同利用可能な駐車場」「ランドマークとしての魅力」など。中でも厳しい経済情勢のもと、今後数十年にわたり営業することを念頭に、経営計画のチェックには特に重点を置いた。最終的に、宿泊施設の損益分岐客室稼働率を50%に抑えたシビアな経営計画と、ダイワグループのテナント誘致実績を評価、ダイワロイヤル案を入選とした。
        
【シネコン、200室ホテル】
       
旧県立医大の取り壊しが進む 選ばれたダイワロイヤル案は地上20階で高さ82メートル、延べ床面積4万6,700平方メートル、建築面積7,700平方メートル。1階から3階が商業施設(1万3,100平方メートル)で、シネマコンプレックス、物販、飲食店を設置する。4階から20階までが宿泊施設(9,500平方メートル)で、客室202室(シングル156、ツイン42、VIP4)と、宴会場、約100席のレストラン。駐車場は本館北側に隣接する9階建てのビル(2万4,100平方メートル)で、993台分を確保する。
 建設費は本館と駐車場棟で約54億円。本館はダイワロイヤルの全額出資だが、駐車場棟は周辺商業施設との共同利用を考慮し国、県が3億円ずつ補助する。駐車場運営は、同社と県による第3セクターがあたり、土地は県が賃貸する。
 入選決定後、審査会は「都市型ホテルとしての施設、特に会議、宴会、飲食などの交流空間の充実」「ぶらくり丁などへの回遊性確保」「賑わいを創出できる商業施設」「バックスペースの確保」「和歌山城からの景観への配慮」などを課題にあげた。ダイワロイヤルはこの案を元に、9月をめどに基本設計を行い、来年3月までに実施設計を終えて着工。04年12月のオープンを目指す。

写真=旧県立医大の取り壊しが進む)

      
【中心市街地のプラスに】
      
 跡地利用に携わる県企画総務課は「各方面から意見を聞いて計画がまとまりました。大阪や郊外店に流れた人を中心市街地に取り戻したい」と期待を込める。特に、「集客力のあるシネコン、居住性の高いホテルで人を呼び込んでパイを増やすことは、新しい建物だけでなく中心市街地全体のプラスになる」と明言。
 また、和歌山城天守閣(地上68メートル)より高い82メートルとなることで、城周辺の景観に与える影響についても「低層階は幅広いものの、ホテル部は細く高くなっていることで視界をさえぎることが少なく、景観を守ることになる」と前向きにとらえている。
        
「調和に期待」「ちょっと待った」…
           
 画文集「お城の見える町かど」を著書にもつ和歌山市三葛の画家、山本善昭さん=和歌山城は小高い虎伏山と天守閣のバランスがぴったり。大天守、小天守、角櫓と連立式で、見る方向によって風景は違いますが、どの方向から見ても美しいのが特徴だと思います。戦災で焼けた和歌山の街は、再建された城を中心に復興してきました。市が近代化するにつれビルが増えましたが、近代的なビルと城が合わないかというとそうでもない。近代美術館などとは調和していると思いますし、ビルの間から見える城もいい。瓦屋根でなければ城に合わないということはないと思います。医大跡に新しく建てられるビルについては、城より高い低いでなく、市役所や経済センター、東急インなど今あるビルと調和し、街の風景にとけ込むよう、高さやデザインを配慮してほしい。
 県立医科大学跡地利用懇話会委員を務めた「つばさの会和歌山」元会長の柳瀬貴美子さん=懇話会では、宿泊施設はビジネスホテルでなく、国際会議が開けるようなハイグレードなシティホテルを招致し、関西空港から人の流れを和歌山へひっぱり、和歌山の活性化を図るコンセプトがあったと思う。私自身は商業施設に入るテナントも、ホテルに見合ったハイグレード店との認識を持っていた。しかし、当計画には、それらのコンセプトがあまり感じられないのでは。もし和歌山の市場調査に基づいてハイグレードというコンセプトを捨てたのなら理解できるが、目指す形が少々見えにくくなった気がする。もし、中途半端な形になるのなら、基本的な所から利用法を考えなおしてもいいのではないでしょうか。 
     
 キューブ建築研究所の橋本雅史代表=結果として「唯一提出された案が実施される」と聞いた。いろんな意味をこめて「ちょっと待った」というのが本音である。まず最初に、この実施計画についてもっと多くの人に知らしめる必要を感じる。特に、和歌山城よりも高くなるという事実については、数値を羅列するよりも、コンピューターグラフィックスなどを用いて視覚的に比較することが望まれる。タワー形状となると「ぽつっ」と目立つことは、周囲が低層ビルばかりなので明らかなことだと感じる。もしこの計画が実現すれば、和歌山のランドマークとなってしまい、それだと困る。そのことは、和歌山がどのような都市を目指すのかが問われることになる。次に、本当に地域活性化につながるのか? 何を持って“活性”とするのか? すべての施設に言える事だが、「あったらいい」のと、「必要」なのとは大きな違いがある。人は「ものを大事に」と口癖のように唱える。「もの=いまあるもの」とすれば、現存するものを知恵を出し合って利活用したほうが懸命ではないだろうか? ホテル、映画館、ショッピング街と入居するものは全て近隣にもう既にそろっている。兎にも角にも??ばかりの計画ということだ。