新浄水場は和歌山市田屋地区の5万3,500平方メートルに計画。給水量は廃止予定の真砂(3万2,000トン)、出島(5万トン)、島橋(1万トン)の3浄水場の合計と同じ9万2,000トン。加納浄水場(12万1,000トン)は残し、田屋と加納の二本立てで和歌山市の上水をまかなう方針だ。
市の浄水場のうち紀の川北部にあるのは島橋浄水場だけ。島橋は加納浄水場が稼働するまでの仮施設として建設されたため、給水能力は1万トンしかなく、北部の大半へは六十谷橋に平行して走る送水管を使って加納浄水場から送っているのが現状。しかし、災害等で送水管が分断されてしまうと、北部の水需要を島橋だけでまかなうのはとうてい無理なため、以前から川北部に新浄水場の必要性が叫ばれていた。
田屋の新浄水場については今年、調査費に840万円を計上。総事業費240億円をかけ、早ければ2005年に着工、08年からの供給開始をにらむ。
一方、これに伴い廃止される真砂浄水場は1925年の完成で、緩速ろ過方式をとる市内唯一の施設。同方式は、紀の川川底の下部を流れる伏流水を取り、それを真砂に送ってろ過池を通し、最後に次亜塩素で消毒するのが特徴だ。
和歌山市水道局は、「真砂の緩速ろ過方式は、紀の川の水が自然のフィルターを通っている上、浄水場でも薬品を使うのは最後の次亜塩素のみ。それを和歌山城内の配水池から流下しているだけなので、おいしいと評判です」と胸を張る。
しかし、その他の浄水場は急速ろ過方式を採用している。これは紀の川の水をそのまま取る表流水を使い、ゴミや砂を抜くために炭酸ガスや消石灰を投入、さらに、ろ過の前後に次亜塩素を入れ、再び消石灰と炭酸ガスを注入するもの。
急速ろ過の処理能力は緩速ろ過のざっと25倍で、緩速ろ過に急速ろ過と同じ能力を求めるとすると、25倍も広いろ過池が必要。加えて、実験中の複式ろ過方式だと、さらに能力が倍になるため、50倍も開くことになる。市水道局は「アメリカあたりでは緩速ろ過が見直されつつありますが、土地の狭い日本は給水能力を考えると急速ろ過にせざるを得ません。それに緩速ろ過では、仮に農薬などが混じってしまうと取り除けない怖さはあります」。
さらに、緩速ろ過には伏流水が必要だが、これが間もなく取れなくなるのがネック。六十谷橋下流で工事が進む紀の川大堰は来年本体が完成する予定だが、堰の上流部を浚せつすることが決まっており、現在の伏流水取水口が川底から顔を出してしまうからだ。市水道局は「真砂浄水場を何とか残せないかと伏流水を取る場所を探したのですが、適当なところが見つからず、断念しました」と明かす。
一方、紀の川の水は夏場の渇水時期になると富栄養化となり藻などが大量に発生し、水質が悪くなる。表流水を使う現在の急速ろ過方式では、水がカビくさくなることが指摘されていた。このため、市水道局は昨年10月から2年計画で、水処理実験プラント(高度浄水処理)の取り組みを始めている。
現在は、水に含まれる異物の沈殿法、ろ過方式、高度浄水処理法の3点で研究を推進。特に、高度浄水処理法では、ろ過材に砂や、石炭系のアンスラサイト、ポリエチレンの繊維、活性炭などをテスト。紀の川の水質や温度、処理水量を加味しながら、最適の方法を探し、田屋の新浄水場と加納浄水場の新施設に生かす方針だ。
生活に欠かせない水。より安全でおいしい水を市民に提供するため、試行錯誤が続いている。 |