達人に聞く
的とらえる爽快感体験
●○●○スポーツ吹矢編○●○●
         
手本を披露する鍛冶幸雄さん 数あるニュースポーツの中で、お年寄りや若い女性を中心に注目されているのが“スポーツ吹矢”。1998年に日本協会ができたばかりだが、テレビ番組でタレントが挑戦するなど、マスコミで露出度が上がってきたことから人気を集めている。そんな吹矢の魅力を教えてもらおうと、湯浅町で同協会和歌山連絡所を務める鍛治幸雄さんを訪ね、ご指導いただいた。

写真=手本を披露する鍛冶幸雄さん)


         
【きょうの達人】
 鍛治 幸雄さん
(1933年8月11日生まれ)
湯浅町別所在住。首と腰に障害を持つ鍛冶さんは、98年に身障者団体の会報でスポーツ吹矢を知り、早速、日本スポーツ吹矢協会関西支部に連絡。狭いところでも簡単にできる吹矢を県内でも広げたいと、同年9月に同協会和歌山連絡所を立ち上げた。

「県内の競技人口は20人程度ですが、全国では関東を中心に約4000人と言われます。体力を必要としないのでお年寄りが多いほか、若い女性にも人気とか。腹式呼吸を用いるため、内臓が刺激され、腸の働きが良くなり、便秘や肌荒れに効果があると言われています。手軽に楽しめ、健康管理に役立つので、多くの人に知ってほしいですね」

便秘や肌荒れに効果

場所いらずで
どこでも練習
   
 「こんにちは」。鍛治さんが経営する行政書士事務所に入るやいなや、目に飛び込んできたのが吹矢の的。「いつもここで練習してるんですよ。ちょっとした場所でも楽しめるのが魅力の一つですね」と鍛治さん。
 まず、吹矢について説明を受ける。必要な道具は筒、矢、的の3点。筒は口径13ミリで、長さは120センチ、100事務所の一角などどこでも楽しめるセンチ、50センチとあるが、競技会では120センチが一般的だ。矢はプラスチックフィルムを円錐状にしたもの。的は中心が12点で、以下、真ん中から近い順に7点、5点、3点、1点となっている。
 早速、鍛治さんに手本を披露してもらう。構えた筒をおもむろに口元へ。次の瞬間、思い切り吸い込んだ空気を筒の中へ吹き込む。一瞬の空気を切る音の後、的をとらえる音。「なんと言っても的に当たったときの爽快感がいいですね」

写真=事務所の一角などどこでも楽しめる)

手元の1ミリも
的では数センチに
       
的を正確にとらえるためのポイントは大きく2点。吸い込んだ空気をもらさず筒の中に伝えること、そして筒を支える手がぶれないようにすること。「手元の1ミリが的では数センチになる」からだ。あと、腕と同じく、人間には利き目があり、「右利きの人は中心よりやや左側、左利きの人はやや右側をねらうとよい」と鍛治さん。「回数を重ねることで、そのあたりの感覚は分かってくるでしょう」
 アドバイスをいただき、いよいよ挑戦。最初は5メートルからだ。筒を手に取り、矢をセット。「立ち方は、的に向かってまっすぐでも、斜めでもご自由にどうぞ」と鍛治さん。最初はコントロールしやすいだろうと、的を真正面に見ながら吹くことに。
 記念すべき1本目。的の手前で失速する。2本目、またまた届かない。「練習はここまでにして・・・」と気を取り直しての本番1回目、思い切り吹く。これまでにない手応え、いや吹き応え。そして的に当たった音が。近づいて確認すると5点だった。
 吹矢は5本で1回と数えることから、さらに4本。7点、5点、7点、7点と合計で31点。日本スポーツ吹矢協会が定める段・級位認定基準表で見ると、3級(2回×5本=10本で50点)ぐらいの実力があることになる。
 「才能あるんじゃないですか」。達人からもお褒めの言葉を頂戴した。
      
“心の安定”が
 最後の決め手
      
 調子に乗って、今度は8メートルに距離をのばしてみる。しかし、3メートルの差は想像以上に大きく、的がかなり遠く感じる。「えい、ままよ」。幸先良く、7点に命中。以下、1本は惜しくも外した的を見る西山記者が、4本は確実に的をとらえ、合計16点だった。
 鍛治さんと的に近づき、矢をチェックしてみると、当たった矢が縦にほぼまっすぐ並んでいる。「これは空気がもれている証拠ですね。矢を押し出す空気の量が一定していないんですよ」。鍛治さんによると、矢が横に並んだときは吹いた瞬間に手がぶれているのだという。
 空気のもれに注意しながら3回目。しかし、意気込みとは反対に、結果は悪くなるばかり。「少し慣れていろいろ考え始めると、なかなか狙ったところにいかないんですよ」。最初の好調はビギナーズラックだったという訳か。「心の安定が大事。無にならないと結果も悪くなりますよ」。鍛治さんから最後のお言葉をいただく。
 なるほど、激しい動きこそないものの、強靱な精神力が問われるところは、やはり吹矢がスポーツたる所以なのだろうと納得させられた1日だった。(西山徳朗)

写真=始めは好調だったが)