心のバリアフリー期待
身障者補助犬法 10月施行
              

 公共交通機関や宿泊施設、飲食店が、盲導犬、聴導犬、介助犬の同伴を拒むのを禁止する「身体障害者補助犬法」が5月に成立、10月(一部は来年10月)から施行される。盲導犬は道路交通法に記載があったが、聴導犬、介助犬が法律で認定されるのは初めて。関係者からは「“心のバリアフリー”を進める機会にしたい」と期待の声が聞かれる。

         
トルシェと“3人”で
          
宮路さん夫婦とトルシエ 和歌山市の宮地良和さん宅は今年2月、新しい家族を迎えた。名前は「トルシエ」。ラブラドールレトリバーのオスで、現在2歳3カ月の盲導犬だ。
 盲導犬は1人1頭のケースが多いが、宮地さん宅では良和さん、真由美さんが夫婦で使用している。視覚障害者を支援する日本ライトハウス(本部=大阪市)によると、2人で1頭の盲導犬を利用するケースは県内で2例目という。
 良和さんは1981年から94年まで盲導犬のフラッグと暮らしていた。しばらくは盲導犬のいない生活を送っていたが、「2人で1頭を使えたら助かる」と希望。今年2月、盲導犬を使った経験のない真由美さんが大阪府千早赤阪村の日本ライトハウス行動訓練所へ盲導犬との歩行訓練に行き、トルシエと出会った。「第一印象は人なつっこくて、フラッグを思い出しました」と真由美さん。半月後には宮路さん宅へ。良和さんも「おおらかな犬。家に子どもが1人増えたみたい」。
 当初は良和さん、真由美さん両方の目の代わりをすることに対し、トルシエにとまどいがあった様子。良和さんは「最初に会ったのが妻。家に来て初めて私と外出する際には、『この人も連れて行かないとダメなの?』っていうような様子だったと訓練士の方が話していました」。それから約4カ月が経過。買い物や郵便局、銀行へ出かける時は、トルシエがしっかりお供する。
 2人で1頭の盲導犬を使うことについて、宮地さん夫婦は「私たちに苦労は特別ありません。トルシエは大変かもしれませんが(笑)」。さらに良和さんは「トルシエは私たちの目の代わりになってくれるだけではない。外出する際も1人で歩くのと、トルシエがいるのとでは気持ちの面で心強さが違う。いつでも話しかけることができるし、盲導犬は”いやし系”ですね」。

(写真=宮路さん夫婦とトルシエ)

      
公共の場 同伴OK
       
 「20年前、盲導犬を連れてバスに乗ろうとすると断られました。レストランで『犬は外につないで』と言われたこともありました」と良和さん。最近は社会の盲導犬に対する理解はかなり深まっているが、盲導犬がペットと見られることもある。
 目に障害を持つ人の移動を手伝う盲導犬のほか、聴覚障害者に必要な音の情報を伝える聴導犬、肢体不自由な人の着替えの補助、物を拾う動作などを助ける介助犬。5月に成立した身体障害者補助犬法は、盲導犬、聴導犬、介助犬を「身体障害者補助犬」と規定しており、デパートやホテル、劇場、飲食店など不特定多数の人が利用する施設への同伴の拒否を禁じている。公共交通機関は今年10月から、飲食店、宿泊施設は来年10月から施行される。
 これまでも盲導犬は道路交通法で規定されていたが、聴導犬、介助犬は初めて法律で認定された。罰則はないものの、補助犬の同伴が権利として法律で認められたことになる。日本ライトハウス行動訓練所盲導犬訓練部の菅庸起所長代理は「権利を振りかざすだけでなく、盲導犬、そして使用者の指導により力を入れたい」と気を引き締める。
 県障害福祉課は「身障者が利用しやすい建物などハード面の整備も重要だが、障害者が健常者と一緒に暮らせる社会づくりが大切。法律施行を機会に“心のバリアフリー”を一層進めたい」と話している。