どう考える? ジョイフル廃止
      

 65歳以上の高齢者を対象に公衆浴場や映画館、バスの無料サービスを行ってきた和歌山市の「ジョイフル愛のサービス」が3月で一旦廃止された。市の財政難が理由だが、市民から継続を求める声や署名の提出が相次ぎ、和歌山市は新サービス案を9月市議会に提案することを決めている。そもそもが高齢者の閉じこもり防止対策として始まったが、根強い人気と同時に「過剰サービス」との声もある。新サービスへの“叩き台”にするべく市民の声を聞いた。      

         
ジョイフル愛のサービス回数券 ジョイフル愛のサービス事業は「高齢者の生きがいづくり」「閉じこもり防止」を目的に1995年に開始。当初は毎月15日、公衆浴場、映画館に無料入場できる形だった。翌年にバスが加わり、2000年からは日を特定せず、月2回、利用できるようになった。高齢者対象のサービスを自治体を担っているところは多いが、3部門にわたる自治体は中核市30市のうち、和歌山市、岐阜市、奈良市だけという。
 「一時廃止」を大橋建一市長が表明したのは今年の2月議会。「財政状況の悪化」が理由だ。02年度、同サービスの利用の対象は7万5800人で、財政支出は約2億円。00年1億4000万円、02年1億7000万円と、65歳以上人口の増加に伴い、年々増加しており、「今後さらに少子高齢化で増える」(市高齢者福祉課)とみている。
 廃止決定に市民からの反応は強かった。存続を求める団体が署名を募って波田一也議長に請願書を提出。市にも存続を求める声が相次いだ。これを受け、市は、ジョイフルに変わる新サービス案を9月の市議会に提案する方向だ。高齢者福祉課によると、「現段階では内容は白紙」で、「福祉の理念を損なわず、今の市の財政状況をかんがみた適切な形を模索する」と話している。
 今回、ニュース和歌山に寄せられた意見には、「楽しみを奪わないで欲しい」との声が多かったが、弾力的な運用を求める意見も目立った。
 また、通院に欠かせないとする人からバス存続を求める声があった。
 市民の声から、サービスを「楽しみ」だけでなく、「必要不可欠」とする人がいるのが分かったのは確か。閉じこもり防止対策が生活扶助的な面をカバーした部分が見受けられる。
 あくまで「生きがい」事業と位置づけるか、「扶助的」な面を強調するか。再構築に向けて、サービス内容だけでなく事業の目的そのものから再考が迫られそうだ。

写真=ジョイフル愛のサービス回数券)

   
市民の声「庶民の楽しみ奪わないで」「財政改善は市民の義務」
       
 「友達と1日温泉でゆっくりする楽しみがなくなる」「1日楽しむのが健康維持になっていた」「膝が曲がらず障害者手帳をもらっている主人は月2回の花山温泉が楽しみ」と反対の声は多い。
 目立ったのはバス存続の声。女性(76)からは「足が悪く、車に乗れないので市内どこへも行けません。タクシー代は高い」。男性(73)からは「車がなく病院通いが大変」。別の男性(66)は「月2回、病院に薬をもらいにいって友達とお茶飲む。庶民の楽しみを奪ったらイカン」。また、女性(72)からは「バスで出ると、町で食事したり、買い物する。結果的に和歌山市の商業活性化につながっている」との声も。
 さらに一方的な廃止に男性からは「納得のゆく説明もないまま、なぜ廃止なのか。市報を見ても人件費が非常に高い。自分の身辺から見直すべき」と手厳しい。
 一方、廃止は当然という声もある。女性(55)からは「赤字財政をよくするのは市民の義務。支給されるものは税金だという認識が必要」。男性(29)からは「市の財政事情を考えた場合、娯楽の部分をけずるのは仕方ない。それで予算があるのなら、お年寄りの医療費援助に回してはどうか。また、バスに乗って、映画を見た高齢者が買い物してとの経済効果を期待するなら、小さい子どもを持つ若い夫婦に助成してあげた方がいい」。
 重度障害の夫を持つ女性(47)からは「浴場には車イスでは入れない。障害の程度があり、一律に同じサービスを受けられない。建物のバリアフリーを進め障害者が社会に出ていける環境づくりが大切」との意見があった。
 またジョイフル再構築に向け、女性(65)から「所得で一定の線を引き、低所得者の楽しみにする」。女性(66)から「バス、風呂月1回無料、月2回半額に」。また、男性(78)は、東京都の「シルバーパス券」が「負担金額を区民税の非課税者と課税者にわける」「交付年齢70歳以上」などの条件をつけていることを例にとり、「負担がかかってもジョイフルのサービスを復活して欲しい」としている。
    
映画館、浴場、バス会社は?
     
 県興行生活衛生同業組合、井谷泰造理事長…当初は毎月15日限定だったため、人気映画の公開初日と重なったときに非常に混雑し、一般客が入れないことがあった。このため平日に利用してもらうよう変更してもらった。だが、映画好きというよりも連れ立って遊び感覚で来られる方の中に、上映中の雑談などがあり、一般のお客さんからクレームがきたことがある。サービスのシステムを変えるのは賛成。利用者が料金を一部負担するシステムにすれば、本当に映画が好きな人に有効な時間を過ごしてもらえると思う。 
 県公衆浴場業環境衛生同業組合、久堀和夫理事長…5日間ほどで集まった廃止反対の署名は約8000人。ビックリするほどの数字です。市内には29軒の銭湯がありますが、多い店だと無料券での利用者が1カ月に1000人。廃止されると、10軒ほどが閉める可能性があります。全国的に公衆浴場が減る中、各自治体は「公衆浴場の確保のための特別措置に関する法律」に基づき支援していますが、ジョイフル〜も間接的ながらそんな意味合いがありました。制度を復活させる際には、公衆浴場については現状のままにしてほしい。
 和歌山バス営業部…福祉事業として一定の成果を得ていたと思います。免許を持たない高齢者にとってバスは生活に密着した市民の足となり、好評でした。和歌山バスとしても福祉事業の一端を担うものとして意義深くとらえていました。白紙、再構築ということですが、どういう形にしろ、市と協議し、進めていきたいと思います。