『浴衣の似合う町』へ第1歩
加太の5宿泊施設が温泉協同組合設立
観光客を地域でもてなし
       

時代に挑む、次代を拓く新世代 「浴衣での散策が似合う町に」「露天風呂の1つも欲しいなあ」「『よそではちょっとないよな』と言われる料理も開発したい」――。我が町の“次代”を語り合うメンバーの表情は明るい。和歌山市の観光地、加太。観光客の減少が続くこの町で1月、5つの宿泊施設が「加太観光温泉協同組合」を立ち上げ、温泉の所有権を買い取った。4月からは海に近い立地条件を生かした体験型観光もスタート。地域の新たな魅力を発信し始めた。

     
「地域で観光客をもてなしたい」と語る組合メンバー 淡嶋神社に汀菖園、海水浴場と観光スポットに事欠かない加太地区。しかし、観光客数は1988年が約130万人だったのに対し、2001年は約82万人(県観光振興課)。減少傾向は否めない。
 「客が減り始め、そこに友ケ島航路の廃止問題が出てきた。みんな『何とかしなきゃ』と考え始めた」とペンションしおじの塩路光蔵さん。「観光の柱として、温泉が必要ではないか」。そんな声が挙がり始めた。
 加太にも天然温泉はある。しかし、田辺市の業者が所有しており、地区内に16軒ある宿泊施設のうち、温泉を引いているのはわずか3軒。これでは「温泉の町」として売り出せない。
 「地域がまとまっていなかった。隣の宿は商売敵で、足並みがそろわなかった。結果的に、地域として売り出すことを知らなかった」。ペンションふじやの塩路信也さんは語る。

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 01年末、温泉を所有する業者に連絡を取ると、ちょうど買い手を探していることが分かった。翌02年2月に京都の天橋立温泉を視察、宿泊施設が組合をつくって温泉を掘り、人気を得た、その運営方法を学んだ。
 そして今年1月、大阪屋、あたらし屋、岸田荘、ペンションふじや、ペンションしおじの5軒で温泉協同組合を立ち上げ、温泉の所有権を買い取った。大阪屋の利光伸彦さんは「発起人として集まったのが5軒。加太の全ての宿が温泉宿となるのが目標です」。
 現在は5施設が温泉を導入するための工事中で、整備が終わる秋に開湯イベントを計画。釣り大会や友ケ島散策など多様なイベントで盛り上げる予定だ。

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 温泉と並び、PRしたいのが体験型観光。浜辺に落ちている、波に削られ丸みを帯びたガラス
“シーガラス”を材料にランプシェードを作る体験コーナーを、4月から5施設内に開設した。
 体験型観光に注目する1つのきっかけが、県と連携して昨年秋に実施したモニターツアーだ。地元漁師の指導で釣りの仕掛けを作り、船釣りを体験、さらに釣った魚を自分で料理する内容で、参加した40人にはすこぶる好評。
 参加者のうち関係者の印象に残るのが、50代の母親と30代の娘。アウトドア用でなく、ごく普通の服装で現れ、「食べるだけと思ってた」と文句たらたら…。が、時間が経つにつれて魅力に取り付かれ、最後には包丁を持って鯛をさばくまでに。帰りに鯛1匹を購入して行った。
 料理法を指導したあたらし屋の利光昭広さんは「教えるのは初体験。こちらも楽しかった」。観光客との接点が少なかった調理担当者や経営者が客とふれあえたのも大きな経験となった。
 体験型観光を念頭に始めたシーガラス工作教室は淡嶋神社宮司の前田光穂さんの発案。「海を見ながら、シーガラスを拾う。作ったランプシェードを持ち帰ってもらえば、家で思い出に浸ってもらえるでしょう?」。前田さんは続ける。「作るには旅館の者が教えなきゃいけない。そこに客とのふれあいが生まれるんです」

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 小さな加太の町で始まった町おこしの活動。組合を支援しようと、和歌山市が交付金の形で側面からサポートしてくれることになった。地域振興を行政に頼りがちな風潮の中、積極的な行動が行政を動かした形だ。
 「各旅館の風呂に『恋愛の湯』『安産の湯』とか名前を付けたら?」「宿泊客はどの旅館の風呂にも入れるようにするのもいい」「五感を刺激するような体験型イベントを」。アイデアはつきない。「みんなが考えているのは1、2年後のことじゃない。10年、20年先のことなんですよ」と前田さん。
 「物質的でなく、精神的な豊かさが求められる時代。地域を挙げて観光客をもてなしたい」。みんなが思い描く未来へ、着実に一歩ずつ、一歩ず

つ??。

写真=「地域で観光客をもてなしたい」と語る組合メンバー)