よさこいを和歌山に
新しい祭で若者に火を
和歌山MOVE代表 内田嘉高さん
         

時代に挑む・次代を拓く〜新世代 「踊り、祭で和歌山を元気づける」を合い言葉に活動する和歌山MOVE。代表の内田嘉高さん(27)の夢は高知よさこい祭、札幌市のよさこいソーラン祭に負けない祭を和歌山で実現することだ。結成3年目、多くのステージを踏み、仲間と議論を重ね、昨年はオリジナルの「いこらぁ祭」を成功させた。今年は本場の高知のよさこい祭に乗り込む計画だ。「祭のエネルギーで和歌山の若者に火をつけたい」。内田さんは仲間とメッセージを発信し続ける。

     
仲間から「ウッチー」の名で親しまれる内田さん灰色の和歌山 祭で変えよう

 灰色の街――。3年前、大阪府高槻市から和歌山市に移り住んだ第一印象だ。繁華街、駅前……。人や風景に動きがない。衝撃を覚えたのはボウリング場。和歌山に来て初めて多くの若者を目にした。
 「若い人がこんな所に閉じこもってる……これではいけない」。仕事で来た和歌山。ここで暮らす、好きになる理由を求めていた。
 2001年1月、職場で夜、友人の上森成人さん(32)と「北海道のよさこいソーラン祭」に話が及んだ。同祭は高知のよさこい祭をみた学生が作った祭。今や大イベントに育っただけでなく、鳴子を手にグループが好きな踊りを披露する“よさこい”スタイルが全国に広がるきっかけをつくった。和歌山では岩出や橋本にこのスタイルの祭が広がっている。
 内田さんは立命館大学時代に「夢大路」という踊りのチームに入り、高知も北海道も体験済み。祭のエネルギー、活気、笑顔、そして人と人のつながりが思い出というより、社会とかかわった実感として残っていた。「和歌山でよさこい祭を開き、元気にしよう」と2人は思わず握手。互いに「途中で逃げるなよ」と言い合い手を引っ張り合った。

町づくり 視野に入る

 出発は順調だったわけではない。翌月の第1回の説明会には8人が訪れたが、2回目は2人に減っていた。だが、「南中ソーラン」の練習を始め、流れは変わる。春から毎週練習を始め、踊りの爽快感が口コミで広がり、輪が大きくなった。いつしか常時、30人は集まるようになった。
 「MOVEの第2ステージ」とメンバーが振り返るのは01年10月のNPOボランティアメッセへの出演。貴志小学校の生徒ら約40人と踊った。「このころから踊るだけでなく町づくりが視野に入り、新しい人が入ってきた」と言う。
 川本真澄さん(40)も当時活動に共鳴して参加。「町を元気にしたいと思いつつ、日常のなかで活動をしなくてすむ言い訳を探す自分を変えるきっかけになった。活動が町を元気にできると確信する」と語る。和歌山市今福に事務所を構え、活動は軌道に乗り始めた。

ぶんだらか?新しい祭か?

 しかし、昨年はゆれた。“伝統”の「ぶんだら節」リニューアルに向け協力を求められたのだ。
 「行政と連携し、ぶんだらを内から変え新しい祭にするべき」「これまでの和歌山を象徴する祭に参加するのか」「小さくても自分たちの祭をつくろう」。意見が割れ、週に3度も議論し、時には午前3時まで及んだ。メンバー全員の頭にあるイメージは“よさこい祭”。しかし、プロセスで意見がまとまらない。
 結局、「小さくても、曲も振り付けも衣装も自由、本当の笑顔がいっぱいの祭に」との意見に落ち着き、自分たちで企画した新しい祭「いこらぁ祭」を9月に今福児童公園で開催した。
 小さな祭だったが、8グループが踊りを披露。約500人が集まり、ハイライトの「南中ソーラン」ではステージ周辺に100人が集まり、最高潮に達した。
 「祭が器になっていろんな地域の人、個性を持った人がひとつになれる。小さいけど、よさこい祭のエッセンスは実現できた。地域に祭があることの大切さを感じた」。小さな祭は大きな一歩となった。

さらなる飛躍 高知よさこいに

 そして今年。起爆剤にするのが、和歌山県から初めてとなる高知よさこい祭への参加だ。
 高知のよさこい祭は今年50周年を迎える「よさこい」の本家本元。法被姿から現代的なコスチュームを身にまとった多彩なチームが町を踊り歩く。いろんな衣装の人であふれ、若者の笑顔がまぶしい。町全体がきらめく。
 「あの魅力を語れる人を多くつくるのが目的です。得るものは必ずある。保証します」。今回はオリジナルの楽曲を制作。衣装もそろえる。80人を目標に現在も参加を募っており、本場のエネルギーを全員で吸収し、次の飛躍につなげる考えだ。
 「学校で踊りを教えたり、3年目でMOVEも市民権を得て和歌山の社会的資源になれたと思う」と自負もある。「なにより、和歌山を元気にと活動しているのが自分にとってウソのないことに思える。変わろう、変えようと行動する仲間と一緒に活動できるのは楽しい」とすがすがしい。MOVEがつくる新しい祭はもう始まっているようだ。

写真=仲間から「ウッチー」の名で親しまれる内田さん)