団塊の男性に生き方、料理を
地域での居場所作りへコミュニケーション指導

     
 来年(2007年)から定年退職を迎える団塊世代を対象にした「男の料理教室」が人気だ。県や和歌山市は単に料理を指導するだけでなく、定年後をにらんだ生き方講座とのセットで開催、広報後すぐ定員に達するほどの盛況ぶり。また、大阪ガスや関西電力の料理教室は、日常の食事を自分で作ることによる脳の活性化や健康維持をテーマにしている。県主催講座を指導した日本家族再生センターの味沢道明所長は「生き方講座や料理を通して、『生活が楽しい』と分かって欲しい」と願いを込めている。
         
 男性を対象にした料理教室は、県は2001年に1度開催しているが、本格的に取り組んだのは今春、団塊世代を対象に和歌山市と合同で実施したリレー講座「男の生き方セミナー」が最初。男性が家庭や地域で居場所を見つけるための支援が目的で、「会社人間から生活人間になろう」「コミュニケーション上手になろう」の2講座と、料理の基本を教える2講座を開いた。
 9月には県単独で、味沢所長による「男の生き方セミナー〜人生を楽しむ」を開催した。9月2日は「定年後のライフスタイルを考える」をテーマに、仕事中心に生きてきた男性に向け、味沢所長が男性の自殺者が増加していると話しながら、「趣味や地域の人間関係をたくさん持っている方が追いつめられない」と説明。「上司部下、先輩後輩といった上下関係に根ざさない人間関係を作ることが大切」と説いた。
 さらに9日の料理教室の際には、「中高年が料理をする意味は、自分の生活を支え健康を維持するための日常の料理を作ることにある」とし、「いわゆる“男の料理”といった特別なものでは意味がない」と強調した。
 和歌山市は03年、04年に「子どもとペアクッキング」のタイトルで、男性向け料理教室を開催。これは30代、40代が主な対象だったが、今春の県とのリレー講座に続き、11月に単独講座を予定している。
 市男女共生推進センターの藤田道昭センター長は「退職後に何をすれば良いか分からない人に、地域でのコミュニケーションの取り方などを話しますが、料理はそのきっかけになる」と解説する。
 一方、民間の取り組みも始まっている。大阪ガスは今年4月から55歳以上の男性を対象に「脳を元気にする男性シニアクッキング」を開講。背景には、同社が東北大の川島隆太教授と共同で、定年後の男性を対象に調理の習慣が脳機能を向上させることを研究、実証したことがある。
 3カ月の3回シリーズで、初回冒頭に、「料理することが脳の活性化に効果がある」ことを説明、その上で実際の料理に入っている。
 また、関西電力も9月から「男の料理!健康もおいしさも自分でつくる
!」として教室を始めた。毎月実施してきた料理教室に男性の姿が目立ってきたことから開催に踏み切り、「男の人にもできる基礎の料理」を念頭に指導している。
 行政も民間も共通するのは、特別な料理でなく日常生活の料理。「健康を維持し、生活を支えること」が主な目的だ。
 県講座の参加者は、「いままでほとんど作ったことはありませんでしたが、定年を控え、自分の食べ物は自分で作らないと」「毎日作るかどうかはともかく、料理は楽しく、視野を広げる要素になる」「料理をできた方が男の強みになる」と反響も上々だ。
 仕事中心の生活から離れる日が近い団塊世代。「退職後に何をするかを考えてもらう」ことが講座の目的で、味沢所長は「料理はクリエイト(創造)ですが、それだけじゃない。地域で居場所をつくり、生活すること自体が楽しいと分かってもらえたら」と期待を込めている。

写真=料理を作り、生き方の講義を受ける