不登校 ひきこもりに伴走して (4)
レインボーハウス専任スタッフ  土井 広行
     
自分で得られた自信
     
 「何円の切符買うの?」。レインボーハウスで電車に乗って外に出かける時、駅の券売機の前でスタッフが何度も聞かれる質問です。
 和歌山県は自家用車を利用する割合が多いからか、自分で電車やバスに乗ったことがない子どもも多いです。「切符の値段が違っていたら、途中で電車から降ろされるのだろうか」と不安に思っている子どもは、スタッフに何度も切符の値段を確認します。「電車に乗っている間にトイレに行きたくなったらどうしよう」と不安に思っている子どもは、駅で何度もトイレに行きます。
 路線バスに初めて乗る子どもは、バスに乗って運賃を払う手順を何度もスタッフに尋ねます。慣れている人には何でもないことですが、来てくれるだけで大仕事である不登校の子どもたちにとっては、重大な不安要素なのです。
 目的地に着いてからも、不安がなくなることはありません。アイススケートやスキーでは「ちゃんとすべれるだろうか」、カラオケでは「みんなの前で歌えるだろうか」と心配していることが多いです。さらに、外で同級生に会うことが辛い子どもは、「会うかもしれない」という不安もあります。学校の遠足や下校している同年代の集団に出会うと、一気に表情がこわばり、スタッフの陰に隠れるようにして早足にその場を通り過ぎようとすることもありました。このように不安要素が多いので、子どもたちがどんなに楽しみにしてくれていた行事でも、帰る頃には疲れ果てていることが多いのです。
 しかし、行事がいろんな不安を自信に変えてくれる機会になっていることも事実です。アイススケートを例にすると、スタッフに聞きながらでも自分で切符を買って電車に乗り、大阪にあるスケート場まで行けたことが「自分で遠くまで行けた!」という自信につながります。更に、初めて挑戦したアイススケートがすべれるようになると「できなかったことが、できた!」という自信につながります。このような自信の積み重ねが、次に自分で動き出す時の不安要素を減らしていくのではないでしょうか。
 外に行けたかどうか、活動に参加できたかどうかが重要なのではありません。自分で行くと決めて、自分で世界を広げられたことこそが、最も重要なのです。
       
土井広行 1974年、大阪府堺市生まれ。和歌山大学教育学部在学中、不登校児を支援するクラブ「プラットホーム」で活動。卒業後、レインボーハウスのスタッフ。