情熱の形
育児におしゃれと潤いを
build up business
       
シーエスピー 千畑博信社長(45)
      
 機能性重視の授乳服にファッションの要素を取り入れた、おしゃれ授乳服のさきがけブランド「ミル・フェルム」。流行を押さえたデザインと手ごろな値段が好評で、「いつでもおしゃれをしていたい」という全国のママから圧倒的な支持を集める。出店するネット市場の楽天市場では、2007年度上半期キッズ・ベビー・マタニティ大賞でMVP賞、モバイルMVP賞をダブル受賞。展開するシーエスピーの千畑博信社長(45)は「最良のアドバイザーはお客様。喜んでもらえることが何よりうれしい」とおだやかに話す。
        

 高校卒業後、人と接する仕事がしたいと紳士服販売店に就職。接客、仕入れ管理、企画と忙しい日々を送っていた入社4年目、知人の会社経営者に見込まれ、アパレルの新店店長にと引き抜かれた。
 希望で満ちていた開店直前、突然その会社が倒産。借金も抱えた。22歳には辛すぎたが、支えてくれる人がおりなんとか返済できた。
 再就職先は婦人服メーカー。縫製、商品企画などを経て営業に。実直な人柄が信頼され、担当先は増加。営業成績はトップクラスになった。私生活では長男が誕生し、家も建てた。すべてが順調に回り始めた矢先、再び会社が倒産。上司が行方知れずとなり、事後処理を背負わされた。
 窮地に手を差し伸べてくれたのは、かつての取引先の人だ。縫製の仕事をくれ、自宅を事務所に再起をかけた。「販売員時代はお客様から、営業時代は得意先から人のつながりの大切さを教えてもらった」とかみしめる。
 1996年、シーエスピーを立ち上げ独立。量販店向けの婦人服を手がけ、3年目まで順調に売り上げを伸ばし那智勝浦に裁断工場を持った。しかし、店側が中国の工場へとシフトし始め、売り上げは下降の一途を辿った。
 2003年、偶然仕入れた輸入物のアウトレット商品が売れ残り、何とかしようとインターネットオークションに出品。高値が付いたのはマタニティ兼授乳服だった。「ひょっとすると…」と授乳服を100枚作り、出品してみた。瞬く間に完売し、購入者から「半袖が欲しい」「兼用はダボダボ」とのリクエストも返ってきた。すぐ楽天市場に出店を決意。フリルタイプやボーダー柄など5、6種類を作り、同年7月に開店した。
 3カ月後、県内の購入者が商品を取りに来社した。実際に着る人と会うのは初めてだった。「とてもおしゃれで授乳期後も着れる。ありがとう。頑張って」。言葉がダイレクトに響き、うれしかった。そして数日後、ネットショップへのアクセスが前日までの20倍に跳ね上がる。「ありがとう」の言葉の主が、母親が集まるサイトに商品の魅力を書き込んだのだ。ネットの口コミ効果はとどまらず、1年間で売り上げは50倍に。「授乳服に出合った時、私には小売店の経験があり、周りの人のおかげでモノ作りができる環境にあった。ラッキーなんです」と謙虚に語る。
 下請けをやめ、オリジナルブランド「ミル・フェルム」を扱う新生シーエスピーが誕生。常に“旬”を意識し、「家族で出かけても私が婦人服の店から出ないので、妻と子どもが待ってます」と笑う。
 機能性やストレッチ素材などの使用感を、モニターに細かくヒアリングする。声を生かして開発される商品。薄い重ね着をしたような「レイヤータイプ」は特許を取得した。結婚式でも着られるフォーマルウェアも好評だ。
 今は育児雑誌や子ども服メーカーとのコラボレーションなど活躍の幅を広げ、アウターに響かない授乳用インナー、ベビー用品など商品カテゴリーも増えている。
 2006年11月には「お客様の顔が見えるように」と岩出市にショールームがある新社屋をオープン。「いらっしゃいませ」から始まるコミュニケーションに心が弾む。
 「最初のお客様のお子さんが小学生になるころ、ランドセルを作りたい」とはにかんだような表情を見せる。赤ちゃんとママ、そしてその家族の笑顔のために、千畑社長のひたむきな挑戦は続く。