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消防士になって10年が経ちます。物心つくころから消防士になるのが僕の夢でした。消防団で活躍する父の姿に憧れを抱いたのかもしれません。保育所では絵の時間に消防車ばかり描き、「大きくなったら消防車になる!」と言っては周りを笑わせたそうです。高校で進路を考えたとき、消防士しかありませんでした。毎日試験に向けての勉強と、家から小学校まで往復4キロを走り、鉄棒で懸垂をして体を鍛えました。合格の知らせは本当にうれしかったです。 とはいえ、初めての現場はやはり緊張しました。炎を前にして、怖くなかったと言えば嘘になります。被害を最小限に抑えたい一心で、これまで現場に臨んで来ました。 ある朝の8時ごろ、出動要請が入りました。「車が転落し、燃えている」と。現場は交通量が少なく道路から10メートルほど下の谷底。一刻を争い現場に向かうと、谷底で車が炎をあげていました。一瞬頭に絶望感がよぎりました。しかし、事故直後そばを通りかかった5、6人の方が、炎上する車中の人を救出していたのです。一般の方が10メートルも降りて、炎上する車に向かう勇気はどれほどでしょう。救急車、消防車が現場に到着するまでの間に、周囲の方がどう対処してくれるかで、救われる命があります。幸い被害に遭われた方は、しばらく入院した後無事退院されたそうです。一般の方から勇気と「助けたい」という心の強さを教えられ、己の仕事の責任や重さを再認識しました。 消防士になってから広がった世界もあります。今僕は公安職員で構成する「日本警察消防スポーツ連盟」に県でただ1人所属しています。2年に1度世界大会が開催され、55カ国から1万人以上が集結します。今年3月のオーストラリア大会には日本から約50人が参加。日本では公務員のイメージが強い消防士ですが、海外の大会会場は観客で埋め尽くされ、まるでヒーローです。夢だった消防士になれた今、今度は僕が多くの人に消防の仕事を知ってもらえるよう努めねばなりません。幼いころの僕のように消防士に憧れる子どもが一人でも多くなってもらえればうれしいです。(紀の川市 土井敏弘)。 写真=那賀消防組合消防本部で |
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