不登校 ひきこもりに伴走して (9)
レインボーハウス専任スタッフ  土井 広行
     
「補給基地」を足がかりに
     
 突然ですが、みなさんの周りに学校に行くのが辛そうだったり、家から出られなくなっている子どもや青年はいませんか。
 4月になると、子どもたちは「さぁ、この1年がんばろう」と心の中で気合いを入れます。前年度に学校に行けた子 みなさんは、エベレストに登る様子を御覧になったことがありますか。私は詳しくないですが、頂上までの登山ルートにベースキャンプと呼ばれる拠点を幾つも設けて、更に上に登るための足がかりにしていくそうです。そして、最終ベースキャンプでは吹雪でない天候の良い日を待ち、最適なルートを選んで頂上にアタックするのです。
 不登校・ひきこもりの子ども・青年が家から外に出て行く道のりは、エベレストに登っていく様子に似ている気がします。家から出られなかった子どもが外に出て行こうとする時、それはまさに吹雪の雪山に出て行く気持ちなのかもしれません。それでも出て行けるのは、補給基地である家でしっかりとエネルギーを補給できたからなのです。もし外に出てしんどくなったとしても、またエネルギーを補給すれば再びアタックできるので、いつでも戻れる補給基地があるということが、外に出ようとする時の大きな安心感になるのです。
 家の外で次の補給基地が見つかれば、今度はその第2補給基地も拠点にすることで、新しい世界にアタックできます。第2補給基地は支援機関のような場所かもしれませんし、「近所の大工さんと話すのが、おもろいねん」という子にとっては個人が補給基地です。このような補給基地となる場所や個人とのつながりを増やしていくことが、出て行ける世界を広げることにつながるのです。
 アタックは、いつも成功するとは限りません。しんどいことや辛いこともあるでしょう。しんどくなったら一度戻ってエネルギーを補給し、そして再びどうするか考える。この積み重ねが本人の「しなやかさ」につながり、ゆっくりですが確実に自分の生き方を築く歩みになる気がするのです。
 「家やレインボーハウスを居心地良くしてしまうと、ずっと社会に出て行けなくなるのではないか」「甘やかしてばかりでは、社会に出てから困る。社会に出ても通用するように、もっと我慢や厳しさも教えなあかん」とよく言われます。レインボーハウスが補給基地になれているのかもわかりません。しかし、家から外に出て、やっとの思いで来てくれている子ども・青年が一人でもいる限り、レインボーハウスは居心地が良くていいと思っています。
       
土井広行 1974年、大阪府堺市生まれ。和歌山大学教育学部在学中、不登校児を支援するクラブ「プラットホーム」で活動。卒業後、レインボーハウスのスタッフ。