最優秀賞に藤木菜巳さん
今年の干支ねずみが主役創作童話コンクール
 ニュース和歌山は2008年正月号企画として「干支が主役!創作童話コンクール」を実施。小中高生に応募を呼びかけたところ、個性豊かなねずみが主役の135作品が寄せられました。審査の結果、最優秀賞に輝いたのは向陽中学1年の藤木菜巳さん。今回は受賞作「ねずみひめとりゅう」を、漫画家いわみせいじさんの挿絵付きで紹介します。
 コンクールには小学生59作品、中学生22作品、高校生54作品の計135作品が寄せられました。
 審査に当たったのは、わかやま絵本の会代表の松下千恵さん、県立図書館で絵本の読み聞かせなどを行う「おはなしボランティア  きいちご」の山路幸子さん、本紙で4コマ漫画「和歌山さんちのハッサクくん」を連載中の漫画家いわみせいじさんの3人。
 子どもたちの豊かな想像力を感じさせる力作が多く、審査が難航する中、強く、心優しいねずみひめを主役にした藤木さんの作品が最優秀賞に。このほか、8作品が入賞しました。
 優秀賞以下の入賞作品は1月5日以降の本紙で順次、紹介します。
藤木さんのメッセージ
「やさしい心 持ってほしい」

 最優秀賞受賞と聞いたときは、びっくりして「本当かな?」と思いました。小さいころから絵本を読むのは好きですが、文章を創作したことはありませんでした。今、学校では文芸部に所属し、部誌に詩を載せたことはあります。ただ、童話を書くのは今回が初めてでした。子ども向けだから、優しい感じにしなきゃいけないと悩みながら、2週間ぐらいで完成させました。読んでくれた子どもたちには「やさしい心を持ってほしい」とのメッセージを伝えたいです。

ねずみひめとりゅう

 ずっと昔のお話です。あるところにとても小さなねずみの町がありました。その町には大きなお城がたっていました。お城にはまっ白いねずみのおひめさまが住んでいました。
 「おひめさま」というとみなさんの考えではかよわいというイメージだと思いますが、このねずみのおひめさまは違いました。
 ねずみのおひめさまは、まっ白くとても美しかったのですが、とても勇敢で強いおひめさまなのでした。たとえ、ねずみのお城にネコがやって来てもおひめさまにかかれば、すぐに追い返してしまうのでした。そのせいか、おひめさまは「美しいが心は鬼だ」とうわさされてしまいました。しかし、本当はやさしい心の持ち主だったのです。
 ある日、おひめさまねずみのお父さんが言いました。
 「おまえもそろそろむこを探してみてはどうだ? 心が鬼と言われては探しにくいかもしれんな。ハッハッハ」
 お父さんねずみは軽く言いましたが、ひめにとっては辛く悲しいことでした。
 ある日、ねずみひめは言いました。「むこ探しに行ってまいります」
 ひめが強いことはお父さんねずみも知っていたので止めませんでした。ひめが出かける前にお母さんねずみは言いました。
 「うわさに流されちゃだめよ。私はあなたがやさしい心を持っていることを知っているわ。その心を忘れなければきっと幸せになれるわ」
 ねずみひめはこくりとうなずき出て行きました。
 ひめは町を渡り歩きました。しかし、うわさはどこまでもひろがっていて、なかなか良い人には出会えません。そして、ひめは思いました。「そうだ、私が強くないことをみんなに知らせればいいのだわ」。そう思ったひめは、たくさんの動物に協力をもとめました。そう、ひめは自分より大きい動物に悪者役をしてもらい、自分が弱いと思ってほしかったのです。   
 ひめはたくさんの動物にお願いします。ネコ、トラ、犬、あるときはゾウまで。しかし、ひめの話をまともに聞いてはくれませんでした。あまりに話を聞いてくれないので、ひめはあきらめかけました。「次に会った動物が話を聞いてくれないのならやめてしまおう」と思いました。そして、次の動物に会いました。
 その動物はとても大きなりゅうでした。ひめは、思い切ってお願いしました。
 「どうか、私のお願いを聞いてくれませんか、あなたに危害を加えることはありません」
 ひめは「きっと聞いてはくれないだろう」と思いました。りゅうの答えは、「いいですよ。君の苦労はよく知っている」
 ひめは少しおどろきましたが、すぐにお礼を言いました。そして、今までのことを話しました。
 ひめとりゅうは作戦を考え、実行しました。はじめ、りゅうと共にねずみの町にもどりました。りゅうはひめを軽くつかみ言いました。
 「ひめはつかまった。返してほしければ食べ物を持って来い」
 町のねずみとひめの父母はすっかり信じこんでしまいました。ひめの父母はひめを助けたい一心です。ひめのお父さんは兵隊を呼び、こう命令しました。
 「ひめに当てぬよう攻撃しろ」
 ひめとりゅうはそんなことは思っていないのでびっくりしました。そのまま兵隊はりゅうに向かって矢をうちはじめました。無数の矢がりゅうに向かって飛びます。ひめは矢がりゅうにあたる瞬間、りゅうの前にとび出しました。矢はひめにささりました。
 ひめはその時、思いました。
 「お母さん、やさしい心を持って本当に幸せだったわ」
と。ひめのお父さんはいそいでひめにかけつけました。そのひめはとても幸せそうな顔をしていました。そして、ひめと共に矢に当たったりゅうも…。
 このことをすべて見ていた神様は、ねずみひめの「人をかばうやさしい心」とりゅうの「人を思いやるやさしい心」に感心し、日本の干支に選んだのです。

審査員の皆さん
わかやま絵本の会・松下千恵さん

 悪いうわさを聞きながら、それを自分の力で克服しようとしたねずみひめ。強いだけでなく、しかも思いやりがある。そこにひかれました。

漫画家・いわみせいじさん

 まるで絵本を読んでいるような気分にさせてもらいました。この年齢の女の子がいつも感じていることがつまっているようにも思いました。

きいちご・山路幸子さん

 ねずみひめが死んでしまって終わりでなく、十二支として生かされるラスト。作者のあったかい気持ちが伝わってきました。

●●入賞者の皆さん●●
最優秀賞 「ねずみひめとりゅう」
藤木菜巳さん(向陽中1年)
優秀賞 「ネズミの歯とかえてくれ」〔共作〕
永西紗耶香さん(湊小2年)
御前友宏さん(松江小2年)
優秀賞 「ねずみの運動会」
伊達侑奈さん(東山東小3年)
優秀賞 「タマとボクのはなし」
坂浦一星さん(那賀高1年)
優秀賞 「空を飛ぶネズミ」
森本友紀さん(那賀高1年)
審査員特別賞
松下千恵賞 「ふくねずみの大ちゃん」塩澤明日圭さん(新南小3年)
山路幸子賞 「大晦日の冒険」
多田怜小那さん(智辯小4年)
いわみせいじ賞
「シンデレラ・マウス」
坂口文菜さん(那賀高1年)
敢闘賞 「子ねずみと黒ネコ」
郷美月さん(向陽高1年)
※優秀賞以下の作品は順次、紙面で紹介します。