優秀賞 ネズミの歯とかえてくれ!
永西紗耶香さん(湊小2)・御前友宏さん(松江小2)
けん太くんちの天井うらにあるネズミ小学校では、ネズミの子どもたちが、とんだりはねたり元気よく遊んでいます。
今日も人間の世界では、子どもたちが「ネズミの歯とかえてくれ!」と、下の歯を屋根にほうりなげたり、上の歯を地面にむかってほうりなげています。
担任のチュー子先生がいいました。
「みんな、集まって! もうすぐけん太くんの前歯がぬけそうなの。誰か、かえてあげてくれない?」
「ボクはいやだよ。けん太くんったら、おかしばっかり食べて、歯みがきしないから、ボクのピカピカの歯をあげても、また虫歯にされちゃうよォー」
わんぱくネズミのチュー吉がいいました。すると…
「あたしはもういやよ。いろんな子にあげたから、歯は、もうあと一本しか残ってないもの」
「おいらだって、ぜったいいやだよ!」
「わたしも、ごめんだわ!」
みんな口々にいいます。
「こまったわねぇ…。ネズミの子どもは、人間の子どもにピカピカ強い歯をあげることが大昔からずっとうけつがれてきたことなのに。それが、あなたたちの時代にストップしてしまったら、先生、ご先祖さまに申し訳ないわ」
チュー子先生は、こまってしまいました。
そうこうしているうちに、けん太くんの前歯がぬけました。けん太くんは、2階の窓からいきおいよく「ネズミの歯とかえてくれ」と、ほうりなげ、毎日、まだかまだかと待っています。けれど、歯ははえてきません。
ネズミ界では、まだけん太くんの歯とかえてくれる子は決まりません。
「やーい、けん太。まだはえてこないのか。歯ぬけ、歯ぬけ、ハハハハハ…」
待っても待っても歯がはえてこないけん太くんは、今日もクラスのみんなからいじめられているのです。
悲しくなったけん太くんは、家に帰ってしくしく泣いていると、お母さんが、
「けん太、チョコレートばかり食べて、夜ねる前もちゃんと歯みがきしなかったからでしょ。今日からがんばろうね。きっとはえてくるよ」
と、やさしくいってくれました。
「わかった。ぼく今日からがんばるよ!」
そういって、けん太くんは、毎日毎日、一生けん命、歯みがきをはじめました。
それを天井うらから見ていたネズミのチュー吉は、なんだかかわいそうになってきて、思わず先生にいいました。
「ぼく、けん太くんに歯をあげるよ。だって毎日あんなに歯みがき、がんばってるんだもん。かわいそうだよ」
「ほんとにいいの? ありがとう、チュー吉くん。きっと、あなたの歯を大切にしてくれるわ」
チュー子先生は、チュー吉くんをだきしめました。
数日後、けん太くんの口もとに、白く光るものが見えました。
今年はネズミ年、ぼくたち、わたしたちもしっかり歯をみがこうね。
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審査員・松下千恵さん(わかやま絵本の会代表)のコメント…子どもの視点で書かれていておもしろかった。すぐに願いが叶うのではなく、まず、自分の力で努力する。そんな気持ちが出ている作品でした。