2008和歌山展望
学校再生のキーワードは「地域」 
和歌山大学教授 市川純夫
         
 昨年は、全国一斉学力テストの結果として和歌山県の低い順位が発表され、また国際調査で日本の子どもの到達度の世界的順位が下がっているということが報道されました。最も恐れるのは、これらの数値や順位に踊らされ、その対策に躍起になることによって、肝心の「子どもにどういう力をつけ、どういう人間に育てるのか」ということについての地域、保護者を含めての実質的な論議がおろそかになってしまうことです。
 今、私たちにとって決定的に重要な問題は、「地球環境をどう救うか」の問題です。この重要な問題に立ち向かうのに必要な資質は、世界各国の人々と「連帯」する資質です。こういう時期にあって、競争による活性化という発想で教育政策を進めることは、大きな誤りを引き起こすことになるでしょう。ナショナル・トラスト運動の先駆の地であり、世界遺産登録された熊野古道を持つ和歌山からの発信として、ぜひ地球環境を護るための人間の基本的資質とは何かを追求していきたいものです。その結果として和歌山の教育の特徴も出てくることになります。
 学校は、我がまま放題に振る舞う子どもや「モンスター・ペアレント」の出現によって、困難にさらされていますが、しかし考えてみれば、これまで表現を抑圧されてきた子どもが、学校で自由に表現できるようになったという姿としても受け取れますし、親が学校の教育に対して要求を出すのは決して悪いことではありません。その表現の仕方がまだ未熟なだけであって、学校が国の制度から、本当に子どもや地域の人々のものになる過渡期の姿として、現在の学校をとらえ、それを乗り越えるすべを考えていかなければなりません。
 「地域」こそ学校教育再生のキーワードです。課題となっている学校統廃合の動きも、地域と連携した学校づくりの観点からその適否を検討しなければならないでしょう。