地域の景観 次世代へ

            
 和歌山市の沿岸部で、地域の景観を再生させる活動が目立っている。和歌浦への集客増をめざす和歌浦湾海業(坂口邦三理事長)は旧雑賀崎小学校の跡地を整備し、野外教育など多目的スペース化を進めている。また、水軒地区では、昭和30年代に埋め立てられた水軒の浜の松林を復活させようと「水軒の浜に松を植える会」(豊田善之会長)が発足。水軒の美しい砂を生かし松の植栽を進め憩いの場づくりを図る。「地域の人に愛着のある場を次の世代に生かしたい」。それぞれの思いは共通している。
     
■旧雑賀崎小跡を多目的に    和歌浦湾海業
     
 旧雑賀崎小学校は1893年(明治26年)、雑賀崎小と田野小が合併し開設された。高台にあり、かつては海が一望できる約4000平方メートルの敷地に4棟の校舎があった。
 1957年に小学校が移転してから、跡地は荒れ放題になっていた。土地は和歌山市の所有だが、雑木が生い茂る荒れ地と化していた。
 この場所を地域の魅力発信の地として再生しようと考えたのが和歌浦湾海業だ。
 和歌浦湾海業は和歌浦への集客増をめざすNPO法人。自治会や和歌の浦観光協会、漁業関係者らがメンバーで、漁業、観光、レジャー分野で魅力を生み、活気ある和歌浦づくりをめざす。今回の整備もその一環で、県の「紀の国森づくり基金活用事業」として行った。
 谷吉哉事務局長は「ウォーキングの休憩場所、野外教育、また震災時の避難場所として多目的に活用したい。特に子どもが自然に触れる場所になれば」と望む。
 1月20日には雑木の伐採作業を地元住民や、和歌山トヨペット、きのくに信用金庫、東組ら企業の協力を得て実施。170人が丸一日かけて雑木をきり、和歌浦湾の眺望を取り戻した。
 来月にはクリの木など100本近い樹木を植える計画で、谷事務局長は「来年度は間伐材を使ってベンチを作るなど憩える形にしたい。将来的には遊歩道をつくり、和歌浦沿岸を一周できる散歩コースを整備していきたい」と話している。

写真=和歌浦湾の眺望を取り戻した旧雑賀崎小跡

    
■美しい砂と松林を再生   水軒の浜に松を植える会
     
 一方、「水軒の浜に松を植える会」は今年(2008年)1月1日に発足した。江戸時代の水軒堤防が一昨年の発掘調査で、国の史跡になる可能性が高まったことから、西浜中学同窓会の浜友会、地元自治会、トンガの鼻自然クラブのメンバーが集まり、史跡を中心とした公園をつくろうとの声が高まった。
 水軒の浜は昭和30年代まで多くの市民に親しまれた遠浅の海水浴場。埋め立てられ、姿はないが、
浜の手前にあった小高い砂山の形跡は今も残っている。
 会は歴史公園にすることを求めて県に陳情し、松林や砂山を生かし健康づくりにつながる空間の創出をめざす。奥津尚宏事務局長は「今は荒れた感じだが、少し掘ると水軒の浜の美しい砂が出てくる。この砂をふみしめて美しい松林を楽しめるウォーキング道ができれば」と思い描く。
 3月にまず第一回の植樹を行い、今年は周辺の清掃活動から展開する。来年には200本の松を植え、将来的にはオーナー制を導入し、松の植栽を進める。
 奥津事務局長は「50歳から上の人には水軒の浜にはなんらかの思い出があるはず。地域の良い場所を残していきたい」と話している。

写真= かつての浜の面影がうかがえる一角