未来栽培 私の農スタイル 観光と農業 コラボで振興
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上野富一さん(50)
            
 紀の川市豊田のめっけもん広場近くに来年(2009年)夏、ブルーベリー狩りを体験できる観光農園がオープンする。準備を進める上野富一さん(50)は、観光を軸にした農業、商業、工業、流通業をコラボレーションし、新たな農業の展開を探る。担い手育成にも力を入れており、「生産だけでなく、加工、販売、消費者への流れを全体で考えていくことで農業振興につなげる。新しい農業の形を知ってもらい、就農しやすい環境づくりを進めたい」と未来を思い描く。
    
◆ 体験農園を仲間と開設
    
 農家の長男として育った上野さん。学生時代はクラブ活動に明け暮れ、高校、大学と進学しても農業を継ぐことを考えたことはなかった。
 和歌山県内のスーパーに就職し、店長時代に野菜の取り引きをする農家から「養液栽培」について聞き、初めて農業に心が動いた。実家で農業の大変さを見ていたため、土を使わず養分を含んだ液で植物を育てる養液栽培は、先進的でシステム化された合理的な農法に思えた。しかし、子どもを3人抱える上野さんにとって、収入が安定しないという農業のイメージは変わらなかった。
 38歳の時、父が体調をくずし、農業を継ぐことを真剣に考え、勤めていた会社を辞めた。500坪のハウスを4分割して、時期をずらしてスプレー菊を植えることで、安定した収入を確保。すぐに養液栽培を試みることにリスクを感じたため土で育てた。
 就農から3年が経ち、養液栽培を試そうと手始めに「養液土耕」を始めた。土の上にホースを走らせ、ホースの小さな穴から点滴のように養液を染み込ませる仕組みで、コンピューター管理により省力化に成功。養液により収穫量が増え、成長が早まった。また、店長時代に培った流通から販売のノウハウを生かし、出荷量も増加。事業は軌道に乗った。「生産から出荷、経理まで一人でしている農家が大半。システム化して流通、販売まで管理できるようになれば十分やっていける」

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 打田や貴志川、粉河など5町が合併し2005年に誕生した紀の川市。はっさくやイチゴ、桃などの生産が県内1位と、農業が盛んだが農業者の高齢化や担い手不足が深刻化している。
 合併協議会の委員だった上野さんは、農協の体験農業部会や同市観光協会の設立に携わったころから、周囲の農家から土地の管理を依頼されることが多くなった。近隣を見渡すと、放置された農地や赤字続きの農家が多く、次世代が農業を継げる環境整備の必要性を痛感していた。
 また、農業大学生のファームステイを受け入れ、農業の現状や養液栽培を紹介。熱心に学ぶ若者の姿に「農業に携わってほしいが、新規就農が可能な環境ではない」と課題意識を新たにした。「第1次産業が盛んな街なのにグリーンツーリズムや市民農園がない。農業について知ってもらうため、観光客を誘致しよう」と観光農園にたどり着いた。

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 現在、観光農園近くでタマネギやニンジンのオーナーを募集し、種まきから収穫までのサポートを行っている。「収穫した瞬間の喜んだ笑顔を見た時、素直にうれしかった」
 来年夏には、めっけもん広場から徒歩5分の距離に、20代から40代までの仲間5人と企画した観光農園「クィーンズガーデン」の開園を予定している。買い物客や親子連れが主なターゲットで、ブルーベリーを約60アールに1000ポット設ける。ここに安定した収穫と場所を選ばない養液栽培を採用し、ポットに土の代わりとなる堅いスポンジを敷き詰めて、養液を流し込んで育てる。来園者の服が汚れる心配がなく、取ってすぐに食べられるよう農薬は極力使用しない。早生から晩生までの品種を育て、6月から8月までの長期間楽しめる。
 紀の川市農業振興課の城山義弘さんは「めっけもん広場には年間で約100万人が訪れる。特に大阪からのお客さんが多く、都市部の人に安心安全な食材や地産地消を知ってもらいたい」。上野さんは「収穫する楽しみや食物の大切さを感じてもらうだけでなく、養液栽培を、新たな農業の可能性の一つとして知ってほしい」と期待する。
 昨年から紀の川市の担い手育成協議会の会長を務める。「観光を通じて次代の農業を担ってくれる人の発掘と育成につなげたい。1年中農業が体験できる環境にし、第1次産業で地域を盛り上げたい」とふるさとへの思いはさらに強まる。

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 農業で頑張る人々の様々な試みを毎週土曜号で紹介します。