わかやま昭和散歩 つきじ横町
 「ふらり一杯」の風情 今も
 和歌山市元寺町の新築地橋近くの街角に「つきじ横町」の大看板。店名が入った小さな看板も壁に並ぶ。日が傾むくと、のれんが出始める。
 横町の中は決して明るくはない。屋内に四筋の路地があり、小さな飲み屋が密集する。閉めている店も目立つ。
 「今ごろ来たんかえ? 遅いの」「遅いってまだ日高いよ」。少し呂律が回らなくなった酔客の笑い声が奥の共同トイレから聞こえてきた。
 つきじ横町の前身は、近くにあったバラックの飲み屋街だった。それが昭和30年代に現在地に移る形で横町をつくり、当初は組合形式で運営していた。
 名前は大阪の法善寺横町など大衆向き酒場をイメージし、当時あった芝居小屋「ほてい座」の故藤野福松さんが名付けた。当時は、30軒を超えるスタンドやスナックなど一杯飲み屋が大半。店は入れ替わったが、建物は昔のままだ。
 オーナーの橘弘隆さん(68)は「昔は住友金属で働いていた人が仕事帰りに来てくれました。思い出すのはよく流しの人が来たこと。『おーい舟方さん』とか昔ながらの演歌を歌ってくれました」。
 ぶらくり丁の勢いが一時ほどなくなった現在。テナントは減ったが、9店ある。数年前までたこ焼き店を営んでいた藤野綾子さん(76)は「今はママ一人でやっている店が多いです。常連さんに支えられています」。
 それでも横町の絆は今も強い。年に一度の新年会、10月には横町内にある「梅乃不動さん」のまつりがある。各店がお供えをし、山伏が来て祈祷する。食べ物を持ち寄り、横町で一時をともにする。
 「昔に比べ、さびれてきましたが、横町に関心を持ってのぞきに来る人はいます。ここで店をやりたいという人がいる限り続けたい」と橘さん。今宵も昭和の灯はともる。

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地域の“懐かしの昭和スポット”を水曜号で紹介します。