わかやま昭和散歩 紙芝居
 子どもを夢中にさせる劇場
 カンッ、カンッ、カンッ。拍子木の音が鳴る方に注目する子どもたち。「紙芝居だよ〜」。お楽しみのショーの幕開けだ。
 紙芝居は昭和初期に誕生した日本独自の文化。自転車の後ろに台を載せた“紙芝居屋のおじさん”がやってくると、近所の公園や空き地はたちまち、“劇場”に。子どもたちは飴やせんべい、するめをほおばりながら、『黄金バット』や『桃太郎』に夢中になった。
 紙芝居を心待ちにしていた1人だったのが山本和子さん(76)。視覚障害者のため、自治体の広報紙やニュース和歌山などを朗読しテープに録音する活動を40年近く行うボランティア団体「和歌山グループ声」の代表で、10年前、グループ内に「紙芝居工房」を立ち上げた。「年をとったら、“紙芝居屋のおばちゃん”になりたいとずっと思っていたんですよ」
 現在は40代から70代まで約20人のメンバーが活動。和歌山市の中央コミュニティセンターと河北コミュニティセンターで月1回開く会には40人以上の親子が集まる。同工房では1人でなく、登場する役ごとに担当を決め、複数で演じる。魔法使いや動物たちが登場するお話に、子どもたちの目は釘付けになる。「紙芝居は静止画像。でも、言葉を聞くことで、子どもたちの頭の中で絵が動き出す。だからみんな集中して見るんです。10カ月の赤ちゃんが瞬きせずに見ています」と山本さん。
 メンバーの西川末晴さんは「こちらに集中してくれるのを見るだけでうれしい。テレビは一方通行だが、紙芝居は聞いているみんなで一体になれるんですよ」。山本さんも「子どもの目の光は本当に宝物だと思う。『明日はもっと頑張ろう』。そう思わせてくれる」と目を細める。
 テレビに慣れた現代っ子もひきつける紙芝居。小さな舞台に広がる大きな世界は、生の声だからこそ伝わるにちがいない。

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地域の“懐かしの昭和スポット”を水曜号で紹介します。