おどるんや座談会
座談会出席者左から有井安仁堀明日香伊東康守上森成人西平都紀子(敬称略)
    
祭りでまちは変わる
    
 「5年後の和歌山は必ず変わる」を合い言葉に2004年に始まった「おどるんや〜紀州よさこい祭り」。市民手作りの祭りとして多くの人に親しまれ、昨年(2007年)は約20万人の観客が集まる夏の一大風物詩に成長した。5年目を迎えた今年。本紙では祭りと生きる人々を紹介する連載「おどるんや物語〜よさこいに恋をした」に続き、NPO紀州お祭りプロジェクト西平都紀子会長をはじめ、実行委員、踊り子の皆さんに、祭りと和歌山の “これまで”と“これから”を力強く語ってもらった。 (文中敬称略、司会は高垣善信・本紙編集長)
     
5年目を迎え

--今回で5年目を迎えました。これまでを振り返ってみていかがですか。

西平 奇跡と言われた第1回のお祭りから何とか続けることができ、ようやく5年目。地域や商店街、企業など多くの人に支えられ、実行委員も仕事と並行して限られた時間で頑張ってきました。祭りがあるから頑張れるというメンバーもいます。この4年間でたくさんのチームが誕生し、企業、踊り子など市民から、「頑張ってよ」との声もいただき、励みに感じています。

上森成人(38)=NPO紀州お祭りプロジェクト事務局長

上森 第1回の当時、和歌山での生活に物足りなさを感じていました。まちを元気にして自分も変われる祭りを開きたいと思うようになりました。ニュース和歌山の連載「おどるんや物語〜よさこいに恋をした」を読みましたが、改めてまちが変わることは人が変わることだと実感しました。元気の輪が幅広い年齢、学校や職場、地域に広がり、祭りでまちは少しずつ変わっていると思います。

--まちが変わったと実感がわく瞬間はいつですか。

西平 「祭りを開いてくれてありがとう」と言われた時ですね。
上森
 まちとの出合いが増えたと実感した時です。毎年和歌山の飲食店がお祭りに出店していますが、「こんな店あったんだ」と気づくことが多い。まちとつながり、一体感を持つことで自分にとって大切な庭と感じるようになりました。見えていなかったまちの良い部分が見えてきました。

--伊東さんは第1回目から地域会場の高松地区で参加してきました。

伊東康守(39)=よさこいチーム「憂喜世桜」副代表

伊東 娘の幼稚園でよさこいチーム「和歌山MOVE」の演舞を見たとき「すごく元気になるな」と感じました。祭りの開催を聞いて、初めは付き合いで手伝っていましたが、メンバーがやる気満々で「何とか地域を盛り上げよう」という気持ちになりました。地域のおじさん、おばさんが「祭りどうや? 練習うまくいってるか」と子どもたちに声をかけることが増え、住民同士が身近な存在になりましたね。

--有井さんはNPOや若者の視点から見て変化をどのように感じますか。

有井安仁(32)=わかやまNPOセンター事務局長、同祭実行委

有井 大きく2つあります。1つめは、若者のエネルギーが目に見えて出てきたこと。多くの若者が祭りに参加することで、踊っている年輩の人も刺激を受けているようです。もう一つは、「役所にやってもらう」という意識が一般的になくなってきたこと。これまで市民活動は行政の補助金や支援なしではできないと考えがちでしたが、「おどるんや」は市民手作りで役所に依存していません。企業への働きかけや地域の巻き込みなど、市民主体の活動モデルとして先駆的な取り組みだと思います。

--堀さんは今年初めて祭りに参加されます。

堀明日香(20)=和歌山大学学生チーム「和歌乱」メンバー

 実家がある静岡市に「港かっぽれ」という祭りがあります。私が小学生のころは人も屋台もたくさん出てにぎやかだったのに、高校生のころには開催すら怪しくなりました。寂しい思いで和歌山大学に入り、「おどるんや」に出合い、実行委員会に参加して、この経験を静岡に持ち帰って生かしたいと考えるようになりました。「おどるんや」のように、やる気や力が体の内からあふれる祭りにしたい。月2回の実行委員会では、私のような学生から会社員、主婦など幅広いメンバーが熱い議論を交わし、「こんな人たちが和歌山を元気にしようと夜遅くまで頑張っているんだから、私も頑張らないと」と刺激を受けます。

現在の和歌山

--「5年後の和歌山は必ず変わる」を合い言葉に始まった祭りですが、現在の和歌山はどのように映りますか。

有井 建物が建つような目に見える変化はありませんが、祭りに向け踊り子も実行委員も計り知れない時間を尽くします。ハード面でなく気持ちなどソフト面で変わってきています。人づてで伝わる「思い」や「熱」がじわじわと浸透していると感じます。
伊東 踊り子やスタッフ、周囲の人は間違いなく元気になっています。踊り子は1年かけて衣装や振り付け、楽曲などの準備をする中で楽しみや元気を得ます。中年になると踊りなど敬遠しがちですが、「よさこいに出合えて良かった」との声を聞くと、やはり大事なことだと感じますね。
 5年目で和大にやっと学生チーム「和歌乱」ができ、それまでいわゆる“普通の大学生”だったメンバーが「ホンマ和大来てよかった」と話しています。そう言う言葉は大きいです。

西平都紀子(45)=NPO紀州お祭りプロジェクト会長

西平 みんなが祭りに期待を寄せて元気になっていると感じます。若者がまちなかに出てきて、多くの人に支えられる「地域に必要とされる祭り」になれば、まちはもっと変わります。
上森 まだまだ動き始めたばかり。もっとみんながまちづくりに参加して活動が広がるように工夫したい。祭りをきっかけに人が出会ったり、まちに関心を持ったり市民活動に参加した人も多いはず。地方都市の和歌山が変われば全国にも希望は広がると思います。私も以前は都会志向でしたが、祭りで和歌山に愛着を持つようになりました。まちに「和歌山を変えていこう」というベクトルを示せました。

ありがとうのまち

--今年、「ありがとうのまち宣言」を掲げましたね。

西平 祭りを通じて、言う人も言われる人も気持ちいい「ありがとう」の言葉があふれるまちをめざします。ようやく本当のスタート地点に立てた感じがします。プロジェクトは「祭りの開催」でなく「祭りで地域を元気にする」のが目的。人と人とが「ありがとう」と伝え合う「ありがとうのまち和歌山」にしたい。
上森 身近な家族や友人に宛てて、感謝の気持ちをつづってもらう「ありがとうメッセージ」がすでに1500通以上集まっています。感動するものばかりで、前向きなエネルギーがわいてきます。感謝の気持ちをハガキという「形」にすることで色々な感動が浮き上がりました。これまで「祭りを作る」ことを追い続けてきましたが、「みんなの元気を引き出してくれるお祭り」になる試みにしたいですね。
伊東 高松には毎年県外チームも来てくれます。地域会場だけでなく祭り全体を応援し、高松地区のメンバーが中心となって結成したチームで「ありがとう」の言葉かけをしたい。メンバーには、両親のおかげで踊れていることや、いつも見に来てくれたり、衣装を用意してくれて「ありがとう」と言えるよう話しています。
 笑顔があふれるように、しんどくても「ありがとう」と言われると、「よし」って気持ちになります。踊りも準備も万全にし、祭りの最後には後悔せずに笑い合いたいですね。

祭りのこれから

--今後の課題と展望を。

西平 さらに認知度を高めたい。気持ちの面だけでなく、他府県から多くの観客を呼び込むことで地域経済の活性化にもつなげないと、自己満足になってしまう。また、祭りに携わる人を増やし、「次の5年後」につなげたい。
有井 約20万人が集まる大きなイベントは、まちの縮図です。限られた資金とメンバーで、それぞれの「やりたい」を実現するため優先順位を決めて準備を進め、バランス良く祭りを完成させるのは難しいですが、醍醐味でもあります。踊りだけでなく一生懸命活動するスタッフの姿を見て、「このまち、いいな」と感じてほしい。
伊東 地域での課題として、子どもたちへの踊りの普及がまだまだですね。
堀 よさこいを普及させるため、今年新たに制作した踊り『和歌山どんどん』を教えるため、市内の小学校を訪問しましたが、思い切り体を動かす子どもが少ない。誰でも踊れて楽しめるのが魅力のよさこいを「楽しいもの」としてどのように教えるかが大切ですね。子どもたちが「将来よさこいになりたい」って言うんです(笑)。よさこいにはなれないけど、「ずっと将来につながることなんだな」と感じました。
上森 祭りを通じて事業を起こし、長く続けられるように経済基盤を固めたい。また、各チームにはもっと和歌山らしい、和歌山オリジナルのカラーを振り付けや楽曲に盛り込んでもらえるとうれしいですね。今年(2008年)、学校や郵便局に協力してもらいましたが、熱い人が多かった。個人の思いや能力がうまく合わさる「熱い人ネットワーク」ができると面白そうですね。

--最後に会長からメッセージを。

西平 “約束の5年目”を迎えた今年。みなさんに「ありがとう」「来て良かった」と言ってもらえるように心を込めて開催するので、子どもからお年寄りまでたくさんの人に来てもらって楽しんでほしい。

-ありがとうございました。今年も期待しています。(2008年7月27日、ぶらくり丁のよさこい事務所にて)

紀州よさこい祭り…NPO紀州お祭りプロジェクトが2004年から開催。楽曲や振り付け、衣装などが自由なため、若者から高齢者まで幅広い世代に広まり、昨年(2007年)は47チーム2500人が参加。約20万人の観客が訪れた。今年は8月16日(土)、8月17日(日)に和歌山市内で実施する。