昨年10月10日から12月26日まで13回にわたり掲載した「和歌浦(わかのうら)の風景 カラーでよむ紀伊国名所図会」。今回は元日号番外編とし、6回目「妹背山」から9回目「天満宮」に未掲載の1枚を加え、5枚の絵をつなげ1枚の「和歌浦絵巻」を織り成した。国の名勝への指定もささやかれる和歌浦。連載を担当した解説の額田雅裕さん(和歌山市文化振興課文化財班長)、彩色の芝田浩子さん(わかやま絵本の会)に和歌浦の魅力を語ってもらった。   (文中敬称略)
現地スケッチと想像で
彩色した「紀伊国名所図会」を前に額田さん(左)と芝田さん
-----一昨年の春まで連載しました「城下町の風景」に続き、「和歌浦の風景」で再び、江戸時代の地誌書『紀伊国名所図会』をカラーに彩って頂きました。新たに発見したこと、改めて感じたことはありますか?
 額田 30〜40メートルの小高い丘(やま)の上や中腹に、寺社が立地しており、何カ所かをまとめて歩いてまわるとかなり疲れると感じました。また、市町前を除いた和歌浦には、絵図で白く彩色してもらった塩田がかなり広く分布していたことが新たに分かりました。この5枚をついだ市町前の絵図をみると、200年前の入江はまったく埋め立てられていなかったのだと改めて感じました。
 芝田 私は明和中、星林高校と、和歌浦で青春を過ごしました。今回、色を塗ることで慣れ親しんだ和歌浦を見直す機会になりました。特に、今回の5枚つづりの絵は、絵師の西村中和が本来なら見ることのできない角度から、想像を交えて鳥瞰(ちょうかん)的に描いていることに、ただただ感心します。私はこのつらなりが好きで、自分でもつなげて作りました。
-----連載では、どの回に興味を覚えましたか?
 額田 4回目の「養珠寺と妙見堂」(10月31日号)です。和歌浦というと、州浜と内海(入江)のイメージですが、内陸側にあった塩田と、砂寄せ・運搬・煎熬(せんごう)という製塩工程が細かく描かれていてよくわかり、これらの絵図は実際に現地でスケッチして描かれていたことが分かったからです。
 芝田 私は5回目の「観海閣」(11月7日号)から見た紀三井寺の風景ですね。船で河を渡り、紀三井寺へ向かっているのも面白いし、学生のころよく行ったこともあり、昔の絵ですが、自分が絵の中にいる気がしてきます。13回目の「雑賀崎」(12月26日号)では、取材で青石の美しさを感じました。自分ではその色を充分表現できなかったのですが、船に乗って雑賀崎の青石を見た時、ただ美しいだけでなく、吸い込まれるような、ぞっとするような美しさを感じました。
景観保全した紀州藩
-----今回は特別編ということで、妹背山から天満宮まで連載4回分と未掲載の絵を合わせ掲載しました。こうしてつらねてみると、妹背山、玉津島、東照宮、天満宮と古代から近世の歴史が織り込まれているように見えます。こういう場所は全国的にも珍しいのではないでしょうか?
 額田 和歌浦は、玉津島神社・天満宮・東照宮など古代から近世の史跡だけではなく、景観の優れた名勝であり、干潟の生物や奠供山・和歌浦干潟などの地形・地質の天然記念物としても優れているといわれています。史跡・名勝・天然記念物というすべてがそろっているのは、他にはない和歌浦の魅力であると思われます。町場に近い場所で、どうしてこうした景観が守られてきたかといえば、家康を祀る東照宮の境内ということもありますし、初代藩主の徳川頼宣の言行録『大君言行録』によると、頼宣は、歌枕・名勝地を開発しては末代までの笑いものになるとして、和歌浦の開発を戒め、景観の保全を命じた記述があります。紀州藩は和歌浦の開発を許可してこなかった経緯があるのです。
山、海、湿地が成す原風景
-----和歌浦は海だけでなく山も特徴的ですね。
 額田 和歌浦というとやはり海のイメージなので、連載では、最初に取り上げるのではなく、意表をついて内側のほうから取り上げました。万葉集の頃の和歌浦は、今より陸化が進んでおらず、片男波砂州で隔てられたラグーン(内海)に妹背山・鏡山・玉津島(沖つ島)などの小島が点在する景観でした。それ以前、縄文時代には秋葉山も島、あるいは海に突き出た半島のような状態で、江戸時代にもまだ鶴立島付近まで湿地が残るような状態だったと思います。山と海が織り成す景観が和歌浦の原風景だと思います。
-----額田さんは和歌浦の好きな場所はありますか? 
 額田 多くの賛同者があると思いますが、奠供山の山頂から片男波砂州の方向を見た風景が一番お気に入りです。なぜなら、そこは望海楼があったといわれているところで、風景は変わっていますが、聖武天皇らもここから和歌浦を眺めたのかなと想像すると、同じ場所から1300年前の時を隔ててみられる風景に感動します。
-----芝田さんは和歌浦の魅力をどこに感じますか。
 芝田 私は串本で生まれたので、海には親しんでいますが、和歌浦の海はまた色合いが違います。泳いだりせずに、片男波の海岸でぼうっと海をみてるだけで癒され元気がもらえます。気持ちを海に漂わせることができますね。
「城下町の風景」絶賛発売中 和歌山の歴史と魅力が満載
 「和歌浦の風景」の姉妹編となる『城下町の風景-カラーでよむ「紀伊国名所図会」』(解説=額田雅裕、彩色=芝田浩子、発行=ニュース和歌山、写真)は県内書店で販売中です。
 江戸時代の地誌書『紀伊国名所図会』のうち和歌山城周辺を描いた30枚の絵にわかやま絵本の会の芝田浩子さんが彩色、和歌山市文化振興課班長の額田雅裕さんが解説を加えました。また、現在の写真や地図、江戸時代の「安政2年和歌山城下町絵図」も資料に加え、城下町和歌山の魅力を楽しめる1冊になっています。新聞各紙やテレビ、ラジオで取り上げられ、ご好評を頂いています。
 宮井平安堂、帯伊書店、宮脇書店ロイネット店、宮脇書店和歌山店、上野山書店、宇治書店、TSUTAYA WAYガーデンパーク、津田書店、松原書店、松木書店、福岡書店、紀州屋、荒尾成文堂、和歌山市観光協会、県立博物館、ニュース和歌山で販売。
 1050円。問い合わせはニュース和歌山(073・433・4882、1月5日以降)。

※ニュース和歌山2010年1月1日号掲載