広谷純弘の東京@スイマ物語
 街を歩けば、誰もが知っている有名な場所だけではなく、街のスキマにありながらキラキラと輝く処に出会います。そして其処には、かならず素敵な物語が存在しています。和歌山生まれの建築家(東京生活35年)の広谷純弘が、そんな東京の街のスキマを紹介します。
包みの礼法 現代風に
Shop 様方堂 さて、本日のスキマは、南青山の「Shop 様方堂(さまかたどう)」さんです。ここはグラフィックデザイナー山口信博さんが主催する「折形デザイン研究所」の商品を扱うお店です。ところで前から気になっているのが「様方堂」の由来です。山口さんに聞くと、「間借りをしている人の住所って何々様方○○様って書くでしょう。あの様方から来ているんですよ。堂々と店の名前を名乗るのでなくて大家さんの一階を借りて、ささやかにお店を営んでます。みたいな感じかな」。ふーん、なるほど、なるほど。
 じゃあ山口さん、もうひとつ質問。「折形」って元々どんなモノなんでしょうか。「『折形』とは和紙を折って進物を包む、包みの礼法で、室町時代に武家の礼法のひとつとして確立されたモノ」とのこと。現代でも広く使われている熨斗紙(のしがみ)や熨斗袋(のしぶくろ)も折形がルーツだそうです。
 室内には、祝儀袋や箸袋などの伝統的な折形をアレンジしたものから、幾何学的なデザインの新しい折形が桐箱の中に整然と並べられています(写真上)。そして、驚いたことにどの折形も、紙に切れ目を入れずに矩形の紙のまま作られています。折形では和紙に刃物を入れることは犯してはいけない原則の一つだそうです。贈る側は一枚の和紙で包んで贈る、いただいた側が包みを解くと一枚の和紙にもどる。一枚の和紙が「贈ること・いただくこと」に精神性を与えているように感じます。さてさて素敵な一品を見付けました。今年の干支「虎」の張り子が包まれた立体的な折形です(写真下)。張り子の虎もオリジナルで絵付けは山口さんの奥様・美登利さんの手描きです。
 南青山といえば流行の最先端の街、そこに取り残されたような古い木造の2階屋に手を入れたお店の雰囲気と街との対比も魅力的です。もし出張や旅行のときに時間があれば、ぜひ寄り道していただきたい素敵な「街のスキマ」です。(毎月第3土曜に掲載します。次回は2月20日)

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 広谷純弘(ひろたによしひろ) 建築家、1956年和歌山市生まれ。18歳まで和歌山で暮らす。建築からインテリア、アートワークまで幅広く活動し、グッドデザイン賞・公共建築賞等を受賞。

 Shop 様方堂
 〒107・0062東京都港区南青山4-17-1 電話03・5413・6877 http://www.origata.com 木金土午後1時〜7時営業。

ニュース和歌山2010年1月16日号掲載