2010年の干支とらが主役の創作童話コンクール
いわみせいじ賞 
トラのしっぽ
安原小6年 山下堅蔵くん
 「トラってかっこいいよな」
 弟がぼくにうれしそうに話しかけてきた。今日は家族で動物園へやってきたのだ。色々なゾウやキリンやサルなんか見たけれど、やっぱり一番トラがかっこいいとぼくも思った。
 何匹かいるトラの中で少し子供の子トラが近づいてきて、ブルンとシッポをふり回した。するとなんだか不思議な気持ちになった。
 少しするとおなかがいたくなったので、トイレに行った。トイレが終わってもまだおしりのほうがむずむずした。ふりかえっておしりの方を見たら、黄色と黒色のしましまもようのシッポがユラユラと動いていた。トラのシッポだ。「えっ。シッポがはえているぞ」。ぼくは、またなんだか不思議な気持ちになった。
 無理やりズボンの中にしっぽを入れるけど、ニョキっと黄色と黒色のシマシマのシッポがかってに出てしまう。手でおさえながら弟がいるトラの所へもどったら、弟はまだトラを見ていた。「ガオー、ガオー」とトラはないた。
 「こんにちは」
 なんてことだろう。トラのなき声がぼくには言葉で聞こえてくる。トラのことばがわかるんだ。「どこから来たの? 毎日オリの中だからとてもたいくつなんだ」
 トラがぼくにしゃべった。心ぞうがドキドキしたけど、おそるおそるトラに話しかけてみようと思った。「トラさん、ぼくのことばわかる?」「ああ、わかるとも、さっきぼくが君にまほうをかけたからさ、だから君にもしっぽがあるだろう」。ぼくは、なっとくした。
 「お兄ちゃん、さっきからガオーガオーってまるでトラになったみたいにほえてる」。トラとしゃべっていると人にはトラのなき声にしか聞こえないみたいだ。
 「ぼくのおしりにしっぽがはえたんだけれど、どんな事ができるの」とトラに聞いてみた。「なんにもできないよ。まあ虫なんかがとんできたら、ブンとふりはらうことぐらいだ」。ちょっと残念な気持ちがこみあげてきた。
 きゅうに心配になってきた。みんなにこのしっぽが見つかったらどうしよう。わらわれるのかな。気持ち悪いって思われるのかな。でも、ゆだんしたらしっぽがズボンからピョコンととび出してしまう。なんだか泣きたいような気持ちだ。
 「さあ帰ろう」。弟がお父さんとお母さんと待っていた。おしりを片手でおさえながら、家に帰った。
 「今日は楽しかったね。ばんごはんはヤキニクよ」とお母さんが言った。とてもおいしいと思った。でもずんずんとやいていないなまのお肉を食べていた。まっ赤な肉だ。
 ぼくは、パッと気がついてはしをおいていた。おしりからシッポがピョコンととびでた。そして、ぼくはいそいでシッポをかくした。シッポはズボンにひっかかってたけどギリギリなんとかかくせた。ぼくは、ばれなくてほっとした。
 つぎの日、学校の昼きゅうけい、しっぽとりをしてあそんだ。ぼうしをしっぽのかわりにしてつけた。でも、おしりにはえているトラのしっぽにあたってくすぐったかった。友だちにぼうしをとられたとき、中に入っていたトラのしっぽが、外に出てきた。
 そして、友だちに見られてしまった。「あっ。きみもか。ぼくもトラのしっぽがはえているんだ。きみのトラのしっぽの色は黄と黒なんだ。ぼくのしっぽの色は白と黒なんだよ」
 ぼくは、授業がおわるとすぐに家に帰った。家に帰ると、みんなのズボンからもトラのしっぽがはえていた。
 ぼくは、思った。あのトラさんは、ぼくだけにまほうかけたんじゃなくて、みんなにかけたんだな。
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漫画家いわみせいじ審査員…漫画も文章もそうですが、読者を直接、手でくすぐるわけにはいきません。この文章は読んでいるだけでおしりの辺りがむずむずしてきました。それだけ表現力がすばらしかった。

ニュース和歌山2010年1月30日号掲載