おはなし一輪
岩出市
下方良夫さん(89)
50年ぶりの天守閣
       
 晴天に恵まれた7月11日。約50年ぶりに和歌山城天守閣前広場へ登りました。足が不自由になり、ずっとあきらめていましたが、新聞で見つけた「登城アシスト」の記事を頼りに、忍者に扮したスタッフの皆さんの力を借り、願いが叶いました。
 和歌浦出身の私の父は、和歌山城の門番の仕事をしていました。小さい頃はよく遊びに行って、天守閣から街を眺めた記憶があります。戦争で私は中国戦線に赴きました。帰還して、和歌山城天守閣が焼け落ちているのを見たときは、本当に情けなく感じました。
 戦後は石油会社で働き、天守閣には再建された記念に登って以降、定年まで仕事が忙しく登ることができませんでした。
 4、5年前から足が不自由になりました。年齢を重ねると昔のことを懐かしく思うようになり、次第にお城へ登りたいとの思いが強くなっていました。しかし、車いすの私を担いでもらうわけにいかず、結局お城の近くを車で通ったときに、下から眺めるだけでした。家族も私も半分あきらめていました。
 そんな時、和歌山市が「忍者と一緒に和歌山城」として、電動車いすとスロープで、天守閣前広場まで連れて行ってくれる事業を始めたことを知りました。約二時間かけて、ヘルパー資格を持った忍者姿のスタッフさんと天守閣をめざします。晴天の暑い中、スタッフさんが「休憩どうですか」「暑くありませんか」と気遣いをしてくれ、本当に心の交流がありました。
 天守閣広場に着き、天守閣を見上げました。お城は和歌山のシンボル。長生きして良かったと感じました。街の景色は様変わりしていましたが、お城はその景色をずっと見守ってきたのだと思い、涙があふれました。
 新しい目標ができました。次は秋にお城で紅葉を見たいと思います。また、今回は天守閣前の広場までしか登れなかったので、次は天守閣に登りたいと思います。新たな目標ができ、元気がもらえました。同じように諦めている人たちにもこの事業を知ってもらいたく思います。

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 和歌山城管理事務所(073・435・1044)。

写真=天守閣前で忍者と記念写真

    
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ニュース和歌山2011年8月10日号掲載