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未来栽培 私の農スタイル 稲の声に耳を傾け
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亀岡 廣二さん(74)
            
 “稲の身になっての栽培”がモットーの亀岡廣二さん(74)は、和歌山市北中島の農業生産法人「総健」の社長。全国の農家や農協などと契約し、光合成細菌を主とする有用微生物群を活用した環境への負荷の少ない農法で米作りを行う。米の小売りや卸を手掛けていたが、約20年前にこの農法に出合い、普及への取り組みを始めた。「農業は生命維持のために重要な一次産業。安全、安心を全うし、消費者の要望にこたえられる米作りを全国へ」。まなざしは使命感にあふれる。
    
◆ 微生物資材活用し12県で米作り
    
 高校を卒業した1953年、父の米穀店で働き始めた。当時は戦時中に制定された食糧管理法の下、政府が割り当てる米を販売するのが仕事だった。その量だけでは満足できない消費者からは「値段が高くてもいいから、白米が食べたい」との声が届いた。「客の要望にこたえるのが商売人」。ヤミ米を求め滋賀へ、岡山へと足を伸ばした。61年には店を法人化し、米の卸も手掛けるようになった。
 87年、知人を介し京都大学農学部の小林達治助教授に出会った。小林助教授は自然界の微生物や、微生物入りの有機資材を活用した高品質、安定多収穫の米作りを指導していた。「流通業で30年以上米を取り扱い、米作りの知識は多少あったが、そんな方法があることがショックだった」。と同時に共鳴し、心酔した。
 早速、小林助教授のかばん持ちを始め、全国で行われる講演会に付き添った。一番近い場所で話に耳を傾ける一方、各米産地で意欲的に活動する生産者と交流を深めた。「ヤミ米を主に扱ってきたが、これからは良いものを作り、届けるのを生涯の仕事にしたい」。決意は固まった。

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 微生物農法は、善玉菌を多く含む良質たい肥での土づくりから。厳選し種から元気な苗へ、そして稲へと育てる秘けつは、養分の吸収を助け、根腐れを防ぐ有用微生物群。田植えを終え、水温が上昇したころ、土中の有機物が分解され、根を傷めるガスが発生するが、このガスも微生物が食べてくれる。化学肥料は通常の3分の1以下、化学農薬は2分の1以下に抑え、消費者はもちろん、米作りに携わる農家の健康に配慮する。「すべて健やかに」。そんな願いを込め、“総健農法”と名付けた。
 苗を植える密度は1坪当たり60株が一般的だが、この農法では41株と間隔を広くとる。「人間も満員電車は嫌でしょう? 稲も一緒です」。稲の声を聞き、どの葉にも光が当たるようにする。風通しを良くすれば病気にもかかりにくくなる。伸び伸び育った稲は根が元気で、茎も太い。
 試験栽培を経て、93年、和歌山市の農家と契約。わずか0・3ヘクタールの田で一歩を踏み出した。その後、築いたネットワークを生かし、総健農法で米作りしてくれる農家や農協を増やしていった。
 96年、山形の契約農家が、1反当たりの収量1トンを初めて達成した。長野の農家が作ったあきたこまちは「本場の秋田産よりおいしい」と評価を受けた。農家と喜びを分かち合い、やる気に繋げた。今年(2008年)、北は秋田、南は高知まで12県、計500ヘクタールの田に総健農法は広まった。

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 2004年、古希を機に、会社の1部門だった生産部門を独立させ、農業生産法人「総健」を立ち上げた。
 コシヒカリやササニシキ、酒米の山田錦や500万石…。総健農法で育てる品種に05年、新しい仲間が加わった。腎臓病や肝臓病患者の食事療法に使われる低タンパク米だ。「私も酒が大好き。酒好きには腎臓や肝臓を患っている人が少なくない。その人達に食べてもらいたい」。昨年からアバローム紀の国の一部コース料理に使われ、好評を得ている。現在、栽培は県内の1・2ヘクタールだが、来年は全国100ヘクタールに増やす構想だ。
 7月20日、総健農法で栽培される全国の田のトップを切って、高知で極早生品種、南国そだちの稲刈りが行われた。「たわわに実り、頭を垂れる。その風景が1年の疲れを癒してくれる」。10月に兵庫で山田錦が収穫されるまで約3ヵ月間、うれしい季節は続く。
 農業に軸足を置く今も、商売人時代同様、消費者の声に耳を傾ける姿勢は同じ。「今、お客さんが求めるのは味、安全、安さ。総健農法は全てをクリアできる」と胸を張る。「近い将来、米の関税が自由化され、安い外国産米が上陸してきても打ち勝つ。そんな米作りを広めたい」
 70代、今が実りの時だ。

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  「未来栽培〜私の農スタイル」は今回で終了します。