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 在宅患者を数多く看取ってきた紀の川市の坂口健太郎医師を座長とした「健太郎一座」の演劇『あなただったら、どうする?~親を看取るということ』が23日(土)、和歌山市西高松の松下会館での講座「死と向き合い、生を考える集い」で初上演される。坂口医師は「在宅医療でよく目にする場面を再現します。どこで、どんな最期を迎えるのか、本人と家族が事前に話し合っておくことが重要です。それが本人と家族の幸せにつながります」と話している。

 講座は、教え子を病気で亡くした粉河高校定時制の児玉恵美子教頭が、「死を身近に感じることで自分の人生を大切にするようになる」と考え、2003年に始めた。毎年、専門家を招いての講演と意見交換会を行い、様々な考え方や価値観を共有し参加者の考えを深める。

 今回は紀の川市で200回以上、「生と死を語る会」を開いてきた坂口医師に講師を依頼。「実際の場面を再現することでよりリアルに感じてもらおう」と、ケアマネジャーらの協力を得て劇団を立ち上げた。

 当日は坂口医師の講演に続き、ケアマネジャー6人が演劇を上演。病気の父親を看取る場をめぐり意見が割れる家族を描いた内容で、看病する妻と長男は父親の希望である在宅、遠方で暮らす長女と次男は病院を望み、それぞれの気持ちや意見をぶつけ合う。昨年秋から、役者経験がある川浪政敏さんから台詞のペースや目線などの指導を受け、練習に励んできた。

 長女役を務める磯谷奈津子さんは「国が在宅医療を進める一方、在宅で療養はどうしても『何もしていない』と見られ、市民感覚はまだまだ病院での看取りが主流のように感じます。現場でふれ合ってきた当事者との経験を生かしたい」。

 児玉教頭は「かつては自宅で家族を看取るのが当たり前だったが、病院での看取りが中心になって以降、在宅で迎える死とどう向き合えば良いのか分からなくなっている。在宅でも病院でも、どちらが正しいというわけではなく、自分ならどうするかを考えてほしい」と望んでいる。

 午後1時半から。無料。希望者は和歌山大学地域連携・生涯学習センター(073・427・4623)。

写真=演劇に挑戦するケアマネジャー

(ニュース和歌山2016年1月16日号掲載)