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 和歌山市雑賀崎地区にある築80年以上の古民家を、同市の清水伊久夫さん(42)、綾子さん(30)夫妻が再生させた。当面は住居と綾子さんが得意とする織物のアトリエとして使用。2人は「ゆくゆくは手芸作品の展示会などを開いて建物の改装した部分も見てもらい、過疎化が進む地域にも良い物件があることを伝えたい」と描いている。

 古民家は、裁縫業をしていた綾子さんの祖母が作業場に使っていた。綾子さんは幼いころからよく遊びに訪れ、近所の小道や漁港を駆け回った思い出があり、結婚を機に祖母と一緒に古民家で織物をしようと伊久夫さんに相談。とび職や大工、左官業などの経験がある伊久夫さんが仕事の合間をぬって、建物の内部を改装した。

 3年を経て2015年12月に完成。立派な梁(はり)を残しつつ、天井板を取り払って吹き抜けにした。壁は土壁の上に温かみのある白いけい藻土を塗り、床板は国産ひのきを敷き詰めた。紀州青石を積み上げた石垣の上に建ち、海側の窓からは夕焼けに染まる海の景色が楽しめる。「部材を2人で運んでいる時、地元の人がいつも声をかけてくれた。情緒あふれる港町で、住んでいる人は温かい。古き良き建物や文化を残しつつ、新しいものを取り入れていくモデルになれば」と伊久夫さん。

 祖母は完成を待たずして2年前に亡くなったが、愛用していたミシンは綾子さんが受け継いだ。綾子さんは「思い出の場所でミシンを使い、祖母と一緒に作業する感覚です。展示会などでたくさんの人が見に来ると、雑賀崎のにぎわいにもつながる」と話している。

(ニュース和歌山2016年1月16日号掲載)