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 悩みを抱える一人の少年を、クラスの仲間が支える感動ドラマ──。和歌山市六十谷の有功東小6年風組が自主製作映画『いと』を完成させた。8日に校内で鑑賞会を開き、18日(金)には同市中のイオンシネマで上映する。脚本執筆から撮影、編集まで全て子どもたちが手がけた約60分の長編で、担任の細田和希教諭は「映画は総合芸術。児童一人ひとりの持ち味を生かせた。6年間の生活体験や地域学習の成果が詰まっています」と喜んでいる。

 昨年6月に総合学習の時間で学びたいことを話し合い、映画を製作することになった。脚本は夏休みの宿題で全員が考え、9月に3作品に絞り、担任教師と一人の児童の体が入れ替わり、交通事故で母を亡くした転校生をクラスになじませようと奔走する物語に仕上げた。

 製作にあたり、同市の劇団ZEROから演技、和歌山大学の映像製作チームから撮影の進め方や技法を学び、「スタジオ有功東」として監督、役者、撮影、スケジュール管理、映像編集などに分担した。また、登場人物の個性まで話し合って皆で決めた。

 10月に撮影を始め、校内だけでなく、子どもたちになじみ深い駄菓子屋や六十谷駅、千手川など校外でロケをした。「夕日をみんなで見る場面は感動的なシーンなので、何度も撮り直しました。役者の予定と日が沈むタイミングを合わせるのが難しかった」とカメラ担当の池浦音羽(とわ)くん。地域の見守り隊や駄菓子屋の店主も出演した。

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 撮影終了後は、音楽担当教諭が作曲、自分たちで作詞したオリジナル合唱曲をBGMに盛り込み、上映中のマナーを告知する映像を自作するこだわりよう。8日には全校児童で鑑賞した。

 原作者の1人で監督も務めた上野山諒太くんは「学校の周りにある自然の良さを生かそうと景色の場面を多く入れました。6年間お世話になった人や学んだことを盛り込めました」とにっこり。主人公の西嶋ハルト役を演じた稲垣慧太くんは「先生と中身が入れ替わるので、普段から先生のクセをまねるよう観察しました。演技は経験がなく、最初は緊張してセリフが棒読みでしたが、演じているうちに慣れてきました」と振り返った。

 18日にイオンシネマで開く上映会では、保護者や地域の出演者らを招く。

写真上=映画を完成させた「スタジオ有功東」 同下=教室での撮影シーン

(ニュース和歌山2016年3月12日号掲載)