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 和歌山セーリングクラブ所属の宮川惠子(29)・高野芹奈(せな、18)組が3月に中東のUAEで開かれたアジア選手権大会49er(フォーティーナイナー)FX級で優勝し、8月のリオデジャネイロオリンピック出場を決めた。昨秋の紀の国わかやま国体後にペアを組み、わずか半年で五輪切符を手にした2人。宮川選手は「組んでまだ半年と若く、勢いをもってリオに向かえる。得意とする弱い風の時に積極的に前を走り、台風の目になれたら」と意気込み十分だ。

 49erは2人乗りヨットで競う種目で、女子が出場するFXはリオ五輪から正式種目となる。スピードが出ることから、〝海のF1〟と呼ばれる。

 愛知県出身の宮川選手はセーリング歴20年で、舵を持って船を操作するスキッパーを担う。大阪府出身の高野選手は中学3年の秋にセーリングを始めてまだ3年半。帆を調整し、船のバランスを取るクルーを担当する。和歌浦の海で練習に励んでおり、和歌山県選手団として出場した昨年のわかやま国体で、宮川選手は成年女子セーリングスピリッツ級1位、高野選手は少年女子420級2位と、それぞれ別の選手と組んで上位入賞した。

 リオを目指し、2人がペアになったのは国体後。宮川選手は「船のバランスの取り方やスピードの出し方についてはスキッパーの役割ですが、クルーである高野さんはその部分のセンスもすばらしい」。一方の高野選手は「宮川さんはすごく経験があり、アイデアが豊富。コースの取り方など驚かされることが多い」と信頼を寄せ合う。

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 今年3月7~12日のアジア選手権。8チームが出場した49erFX級は6日間で最大13レースが行われ、総合成績で1位だけがリオ切符を手にできる。1日目、2日目に行われた3レースはいずれも4位と成績が伸びず、さらに3日目は砂嵐でレースは中止に。レース数が減れば挽回のチャンスが減ってしまう。その上、「陸上では私たちの船が倒れていて…。それを見たときは『リオは怪しくなってきた』と思いました」と高野選手。

 4日目、落ち込む2人を救ったのは、和歌浦で指導を受けてきたナショナルコーチ、鈴木國央さんの言葉だった。「この大会に向け、ちゃんと準備をしてきたのは知っている。『リオに行くんだ』という気持ちを2人で確認しておけ」。ここから3レース連続で1位を奪取。第7レースも2位で、5日目を終えて3チームが同点で首位に並んだ。6日目、最終となった第8レースでは得意の弱い風を的確にとらえ、スピードに乗って他チームを突き放し、トップでフィニッシュ。宮川選手は「昨年の国体は『勝たなきゃいけない』という大きなプレッシャーの中で勝つことができましたが、そんな中で培われた勝負強さが今回も生きました」と笑顔を見せる。

 リオ五輪まではあと4ヵ月。シドニー、アテネと2度の五輪を経験している鈴木コーチは「宮川の子どものころから培ってきたレース感と、高野の前向きさがこのチームの武器です。五輪は特別のように思えて、たった10日間の普通のレース。その時までに何が必要か、何ができるのかを考え、これまでのスキルを生かしたレースができれば、きっと結果につながる」と見守っている。

写真上=ペアを組んで半年の高野選手(左)と宮川選手

(ニュース和歌山2016年4月9日号掲載)