昔ながらの遊び「鬼ごっこ」を発展させた「スポーツ鬼ごっこ」の普及が県内で始まった。和歌山市の健康運動指導士、坂口まさしさんら13人が鬼ごっこ協会の公式指導員資格を取得し、同市や橋本市で教室を開催。参加者に能力差があっても一緒に楽しめ、スポーツに必要な基礎力を育む競技で、メンバーは「『鬼ごっこやろう』のすそ野を広げたい」と意気込んでいる。

160611_onigokko 「スポーツ鬼ごっこ」は、城西国際大学の羽崎泰男教授が鬼ごっこをもとに運動能力やコミュニケーション力、チームワークを育てる競技として開発。2010年に鬼ごっこ協会を設立し、全国各地で大会を開き、指導員を増やしている。

 競技は、7人1組で2チームに分かれ、自陣にある棒状の宝を守りつつ、敵陣の宝を先取する回数を競う。攻める際に守る側からタッチされると、自陣の安全地帯に戻らないと、再び参加できない。5分2セットと短時間での、追う、追われるでゲームは白熱する。

 坂口さんが初めて触れたのは09年、和歌山青年会議所が企画した大会だった。「ルールが簡単で小さい子もすぐ理解でき、自主性、協調性を育てられる」と確信。その後、総合型地域スポーツクラブ、安原スポーツクラブで取り入れてきた。公式に普及できるようにと今年1月、鬼ごっこ協会の研修を和歌山市で実施。指導員資格を得た13人を中心に、わかやまスポーツ鬼ごっこ愛好会を立ち上げた。

 4月から、同クラブで小学生対象の連続教室を県内で初めて開いている。既に3回を終え、坂口さんは「みんなすっと入り、充分楽しんでくれる」との手応えだ。

 橋本市の総合型地域スポーツクラブのげんき倶楽部はしもとでも、小学生対象の教室を始めた。福井克之理事は「強制されず、あらゆるスポーツに必要な動きが身につく。関西はまだ盛んではないので、和歌山市と連携し、和歌山から関西を盛り上げたいですね」と語る。

 子ども向け体操教室のPickこども体育館(和歌山市向)は、年中児からプログラムの一つに取り入れる。平井敏喜代表は「鬼ごっこの追う、追われるは人間の本能に根ざしたもの。そこを磨けば体力向上に大きくつながる」とみる。

 5月21日の安原スポーツクラブの教室には、21人が参加した。坂口さんがルールを説明し、その後、3チームで対戦した。最初は、攻守にアンバランスが見られたが、慣れ始めると、自然と分担。宝を奪った際の「とった!」の声が響いた。

 何度も宝を手にした安原小5年の楠見風馬くんは「宝をとると、とても気持ちいい。攻めたり、守ったりが面白い」。友人の新田創侍(そうし)くんも「活躍できるとうれしく、協力できると楽しい。自分がやっているサッカーと似ています」と話していた。

 指導員資格を持つ同クラブの馬場秀典事務局長は「おとりを使ったり、一瞬の隙を突いたりで、大人でもむきになります。コミュニケーション、コミュニティづくりという総合型地域スポーツクラブの理念に合います」。

 坂口さんは「トレーニングに入れる少年サッカーチームや、小学校の土曜スクールで呼んでくれるところも出てきた。順次拠点を増やしたい」と望んでいる。

 安原での教室は18日、7月2日の各土曜日午前9時半。会場は和歌山市江南の安原小体育館。300円。希望者は同クラブ(073・460・9746、メールhidenoribaba@hotmail.com)。

 

 

(2016年6月11日号掲載)