160716_daiti有機農産物生産グループ「紀州大地の会」が6月27日~7月3日、和歌山市内で有機抑草剤を使った水田の公開検証会を開いた(写真)。同会が開発した有機抑草剤「オーガニッ君」の効果を一般に見てもらった。今回で3回目で、試みる農家は全国に広がる。同会は「後継者不足で危機的な日本の農業の一助にしたい」と話している。

 抑草剤はたい肥で、EM研究所(静岡市)が開発した微生物HDM菌に木質の微粒子を混ぜ、食品残さを投入し作った。試みた農家からの「除草作業がほとんどいらなかった」との声を受け、実験を重ね、2014年に同会の園井信雅さんが製法特許権を取得した。

 たい肥内の木質粉末が水田の中で濁りを生んで光をさえぎり、草の発生を抑える。「残留農薬はゼロ。一般に難しいと思われている有機のハードルを大きく下げる」(園井さん)と期待される。

 実証実験は一昨年に始め、昨年は7県10㌶、今年も和歌山をはじめ、福島、山形、埼玉、福井、兵庫、京都の計12㌶と試みる農家は広がる。

 うち、和歌山市馬場の実験田34㌃を公開した。6月9日の田植えの際に10㌃あたり60㌔のオーガニッ君を投入。結果、水に浸かった部分に草はなく、土地の傾斜で水が保てなかった所にわずかに雑草が見られた。

 ある農業関係者は「自分たちでも実験し、効果はあった。有機での除草を目指す人にはいい資材だ」と評価。6月27日には、京都大学農学研究科の白岩立彦教授が見学した。白岩教授は「にわかには信じられないほど草がない。水に浸かる所は草が生えていないため、水もちと効果の関係がうかがえる。他の事例も見てみたい」と語った。

 今後は実証実験を行った地域を拠点に広げていく計画で、大手無洗米加工企業との提携の話も進む。園井さんは「第一次産業の復興、若者が希望を持てる農業の創出につなげたい」と望んでいる。

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 紀州大地の会は冊子『有機水稲栽培20年目の検証と総括』を発行した。無農薬有機農業を掲げてきた同会の活動から、水稲栽培の取り組みを中心にまとめた。有機米の栽培方法、オーガニッ君の普及活動や食味値テストの数値などを豊富なデータで紹介。A4判62㌻。1000円。紀州大地の会広域事業部(073・423・5333)。

(2016年7月16日号掲載)