160716_radio 和歌山市在住のフリーラジオディレクター、岩田隆清さんが企画構成したラジオ番組「福山雅治『被爆クスノキ』へのメッセージ」が放送文化基金賞のラジオ番組奨励賞を受賞した。過去1年間の優れたテレビ、ラジオ番組に贈られる同賞。NHKや大手民間放送局が多数受賞する中、番組は「戦後70年のテーマに独自の方向から挑戦した」と高い評価を得た。

 和歌山放送をへて、フリーのラジオディレクターとして活躍する岩田さん。名古屋や広島など5都市のラジオ局で番組制作に携わる。2010年には、シベリア抑留者の間で歌い継がれた『シベリア夜曲』の作曲者の証言を得たエフエムひらかたの番組でコミュニティラジオ初の放送文化基金賞を受賞した。

 今回の受賞作は戦後70年の企画で昨年7月18日に西宮コミュニティ放送で流した45分の番組。福山雅治の曲『原爆クスノキ』を聴いた女子高校生から「終戦間際、神戸に原爆が4発落ちたとのうわさが広がったと祖母がよく話していた」との手紙が届き、そのうわさの正体を追跡した。

 それが原爆投下の訓練に用いられた模擬原爆で、神戸に1945年7月24日に4発投下されたことが判明。被害の実態や、模擬原爆を落としたB29の乗組員が長崎への原爆投下にかかわっていた事実を描いた。

 過去に有田市への模擬原爆投下を取材した岩田さんにとって思い入れ深いテーマでもあった。岩田さんは「地道な取材を認めてもらえ、うれしい。戦時中の事件は忘れられていくが、今後も可能な限り生の証言を掘り起こし、その声を残していきたい」と意気込んでいる。

(2016年7月16日号掲載)