法医学で子どもの命守る 県立医大が児相と連携

161105_gyakutai 県立医科大学(和歌山市紀三井寺)は今年度から、児童相談所と連携し、虐待を受けている可能性がある子どもの診断に取り組んでいる。10月28日には法医学講座の近藤稔和教授が、4月からの成果を報告。「傷の状態から虐待と判断できる法医学は虐待防止に役立つ。小児科医や教育関係者にも広く知ってもらうことで、不幸にして亡くなる子を減らせるはず」と描いている。

 虐待には、身体的、性的、心理的虐待に加え、育児放棄などのネグレクトがある。全国の相談件数は、社会問題化と共に広く認知されたことなどから増加を続け、2014年度は8万9000件にのぼった。県内もこの10年で2倍に増え、昨年度は約1000件が確認された。

 法医学は一般に、死因などを特定するための司法解剖が専門と思われがちだが、海外では虐待防止に積極的に活用されている。近藤教授は今年4月に児童相談所と連携を始め、7月末までに5人の子どもを受け入れた。腕の骨を折った子や、背中にあざがある子を診察し、日常の行動では起こらないケガや、つじつまの合わない保護者の証言があった場合は児童相談所へ働きかけて保護につながった事例もある。

 近藤教授は「行政、医療、教育の連携が大切で、法医学が先頭に立って取り組んでゆきたい。服を脱がせて初めて虐待が見つかることが多い。社会一般の大人たちにも、子どもたちの様子の変化に敏感になってほしい」と願っている。

パン購入し支援を 売り上げの一部を寄付

161105_kihupan 和歌山市などのパン店4店は、売り上げの一部を児童虐待防止活動に寄付する「キフパン」を30日(水)まで販売。売り上げの一部が子育て支援に取り組む団体「ハッピー・ママ・ライフ」が行うプログラムのワークショップ開催費用に充てられる。販売するパンプラス・クルトン(同市久保丁)の山本友理オーナーは「小さな子どもをもつ母親に人気のパンをキフパンにしました。虐待防止活動をお客さんに知ってもらう機会になれば」と期待している。

 いじめや虐待、体罰から心と体を守るための予防教育法として欧米で開発され、11ヵ国で実践されているプログラム。昨年、和歌山でワークショップ初開催に向けてキフパンを販売したところ、1ヵ月間で約2万7000円集まり、有田川町での実施につながった。

 販売するのは同市のクルトンとベーキングガレージ・ハリマヤ、紀の川市のパン・ド・パニエ、御坊市のボナペティ・ヤナギヤ。売り上げの1割を寄付する対象商品をキフパンとして各店に並べ、プログラムの内容や虐待防止に関する相談機関を紹介するパンフレットを配布する。

 ハッピー・ママ・ライフ事務局長の竿本有紀さんは「気軽に食べられるパンを通じ、虐待防止の意識を広げたい。一人で悩みを抱え込まず、支援機関に相談を」と望む。

 パン店以外の協力も募っている。同会(0738・23・0939)。 

(2016年11月5日号掲載)