1300年前から和歌に詠まれる景勝地、和歌の浦にまつわるストーリーが、文化庁の日本遺産に認定された。日本遺産制度開始3年目の今年は、和歌山県内から「絶景の宝庫 和歌の浦」と「『最初の一滴』醤油醸造の発祥の地 紀州湯浅」の2件が選ばれ、昨年の「鯨とともに生きる」と合わせ、全54件のうち、3件が和歌山となった。

 日本遺産は、地域の歴史的魅力や特色を通じ、日本の文化や伝統を踏まえたストーリーを認定するもので、関連する文化財などを国内外に発信するために制定された。

 和歌の浦は、和歌川河口に広がる干潟を中心に、紀伊水道に面する雑賀崎から海南の藤白坂までの和歌浦湾を取り巻く一帯。山部赤人が詠んだ奈良時代に始まり、松尾芭蕉の江戸時代と、時代ごとに訪れた人たちが素晴らしさを歌に残し、また、絵画や寺社、祭りなどの伝統文化が地元で育まれてきた。

 和歌の浦を研究する国文学者の村瀬憲夫近畿大学名誉教授は、不老橋付近の潮の満ち干、また、妹背山や鏡山、名草山の眺めをたたえ、「文化の積み重ねによる歴史の厚みがある。今後は若い人の心をどう向けさせるかが課題」と指摘する。

 県や和歌山市ほかは今後、協議会を立ち上げ、情報発信拠点や案内板の整備、イベント開催を検討する。県観光振興課は「昔の人が和歌に詠んだ地について、地元の誇りとして再認識し、発信できるようにしたい」と考えている。

P=不老橋と塩竈神社

(ニュース和歌山より。2017年5月6日更新)