那智勝浦の山間部で作られる紅茶に、小麦の風味豊かな中辺路のうどん、有機みかんのマーマレード…。県内の農家らによるこだわりの加工品を集めた和歌山市出口甲賀丁の「くくたち」で5月24日(水)、加工品を使ったカフェがスタートする。店主の正田明日香さん(30)は「農家が作る加工品は、新鮮な作物をぜいたくに使っています。農家と消費者をつなぐ場になれば」と瞳を輝かせる。

 正田さんは向陽高校卒業後、石川県立大学に進学し、環境問題を学んだ。滋賀の農業法人に勤める中、「生産者は栽培と収穫で手いっぱい。手が回りにくい販売分野を手助けしたい」と故郷での起業を決意し、2015年にUターンした。

 県内100ヵ所以上の農産物販売所などを回って試食を繰り返し、気に入った商品を探しては生産者へ手紙を送るところから始めた。直接産地へ足を運んで交流を重ね、今年3月に開いた店では、選び抜いた20軒以上の商品を扱う。

 パッケージだけでは分からない魅力を伝えるため、本宮大社近くで栽培された小麦の全粒粉は「出荷直前に農家さん自ら製粉しているので、風味や香ばしさは抜群」、那智勝浦のゆずエキスには「機械ではなく手で絞るため苦みがなく…」と、生産者から聞き取ったポイントをぎっしり書いたカードを添える。

 「くくたち」は土地ごとに種類があるカブの古名から名付けた。店舗は祖父母の家屋を改装し、県内各地の土を床材に混ぜて土間に。カフェでは旬の食材を使ったモーニングなどを提供する。

 正田さんは「過疎地でたった1軒になっても栽培を続け、田畑を守る生産者の方々を尊敬しています。地元のいいものを知って、県外へのお土産に選んでもらえたら」。店を通じ、豊かな田畑の恵みを伝えてゆく。

 午前10時(24日以降8時)~午後5時。月、火、第2・4日曜休み。同店(073・460・8137)。

写真=正田さんが選び抜いた商品が並ぶ

(ニュース和歌山より。2017年5月20日更新)