〝平成の伊能忠敬〟を目指し、相棒の手押し車と共に日本一周の旅を続ける愛知県大府市の鈴木康吉さん(75)が5月18日、四国の旅を終え、和歌山港に到着した。残すところ紀伊半島の沿岸部のみで、「たくさんの人たちに支えられ、ここまで来ることができた。目標を達成すれば、旅の報告とお礼に全国を回りたい」と目を輝かせている。

 三重県伊勢市出身の鈴木さんは、中学2年の時、本で伊能忠敬を知った。「50歳で家業を子どもに譲って勉強を始め、55歳で全国を歩き始めた。その努力と熱意に引きつけられました」

 鈴木さんは、58歳まで大工として働き、伊能忠敬が地図の完成を待たず亡くなった73歳で一念発起。一昨年は愛知から、関東、東北、北海道、北陸を回る6000㌔、昨年は福井から山陰を経て九州を巡る5000㌔を歩いた。今年は大阪から四国を巡り、紀伊半島を経て愛知へ戻る4000㌔のコースだ。

 テントや寝袋、飲料などを載せた2輪の手押し車は50㌔。車体に突き立てた棒に洗濯物を干し、天板に携帯用の太陽光発電パネルを置いて携帯電話を充電する。タブレット端末も使いこなし、コンビニエンスストアやスーパー、トイレがある公園を調べてコースを決め、1日25~30㌔進む。「大隅半島で見た夜空は、星が降ってきそうでした。幹線道路ではなく、海岸沿いを歩いたからこそ出合えた景色でした」と振り返る。

 18日は旅を応援する和歌山市の中村年秀さんが迎えた。中村さんは「鈴木さんを知り、応援する人が増えれば、旅の力になるはず」と鈴木さんの旅先にあるメディア各社に取材を依頼してきた。鈴木さんは「行く先々で励ましの言葉をもらったり、料理を振る舞ってくれたりと多くの人が支えてくれています」と感謝の気持ちを伝えた。

 和歌山へは、名古屋から新宮を経て白浜へ旅行したことがある。鈴木さんは「今回は南方熊楠記念館を訪ねてみたい。和歌山市から田辺までは初めて通るので、海沿いの景色が楽しみです」。

 7月中旬にゴールの自宅へ到着予定。旅の記録は鈴木さんのフェイスブックから。

写真=旅する鈴木さん(右)と、支える中村さん

(ニュース和歌山より。2017年5月24日更新)