岩出市高塚の那賀高校で7月7日、3年生29人が、地域の伝統工芸品「根来寺根来塗」の制作を体験した。指導した塗師の池ノ上曙山(しょざん)さんは「漆塗りを通して、自分たちが住む土地の文化に目を向け、誇りとしてほしい」と話す。

 根来寺発祥の根来塗は、鎌倉、室町時代を中心に発展。19工程に及ぶ下地作りと鮮やかな朱塗りが特徴で、豊臣秀吉の紀州征伐で製造が途絶えたが、2000年に池ノ上さんらが復活させた。

 体験は5回に分けて実施。4回目のこの日は、黒漆での「中塗り」を終えた器に朱色の漆を塗る「上塗り」を行った。器を丸めた紙の台に乗せテープで固定し、職人から「漆をならすために横方向にべた塗りを引いた後、椀の外側を2回なぞる。表面をなぞるのではなく、ゆっくりと底の方から引く」と実演を交えて指導を受け、塗り上げた。器は、池ノ上さんの工房で乾燥させ、次回、生徒が各自で考えた銘を入れ完成だ。

 受講した下畑恵杜(けいと)さんは「絵を塗るのとはまた違った感じ。無の心ではけの先に意識を集中させました」。林千晴さんは「均等に塗るように気を使いました。塗り残しができてしまったのが悔しい。実際に工房へ見に行きたい」。

 池ノ上さんは「初めて作ってもらうので、かすれて朱塗りの下から黒漆がのぞくのもありますが、それも味の一つですよ」と目を細めていた。

写真=池ノ上さん(左)の指導で制作する生徒たち

(ニュース和歌山/2017年7月15日更新)