西福寺住職 石上公望さん 製作する集い 参加呼びかけ

 一針一礼、その過程は心を豊かにしてくれる──。僧侶が身につける袈裟(けさ)を18年間縫い続ける僧侶がいる。和歌山市小雑賀の曹洞宗西福寺住職、石上公望(こうぼう)さん(41)。5年前から縫う集いを開こうと呼びかけており、「1人でも多くの人に見て、触れて、かかわってもらいたい」と語る。

 石上さんは1999年、福井県の永平寺で修行中、手縫いの袈裟を知った。翌年、独学で作り始め、2006年からは奈良県で開かれる縫う会に通った。

 袈裟は元々、捨てられた布を使うなど、あらゆる執着を排除し作られ、仏そのものと考えられているが、近年は既製品を購入するのが一般的になった。手縫いするのは県内の曹洞宗では石上さんのみ。小さく切った何十枚もの布で構成し、布や糸は暗くくすんだ色ばかりだ。「大きい布にもあえてはさみを入れ、布への執着を断ち切るんです。糸選びでは、この糸の色の方が映えてかっこいいなど邪念が生まれる。常にその邪念を振り払う繰り返し、もぐらたたきのようですよ」


 11年には壇家ら20人以上の協力を得て、1年3ヵ月かけて1着の袈裟を完成させた。十五條糞掃衣(ふんぞうえ)と呼ばれ、古布を染め直し、60枚の布片をつなぎあわせた。「糸のゆがみや間隔のズレに気づいたら、一度針を抜いてやり直す。軽い気持ちで参加した人は大変だったと思いますが、最後までやり遂げてくれました。自身で見て触れて、それぞれが何を感じるのかに意味があるんです」。うまい下手ではなく、一針を入れるごとに礼をするような気持ちでと、その過程の大切さを伝えた。

 もっとたくさんの人に袈裟の功徳を伝えたいと、5年前からは自ら縫う集いを企画。まだ参加者はいない中、今も1人で作り続け、袈裟4着と小さな袈裟5着、袈裟を小さくしたお守り2つを作り、師匠や知人に贈った。「活動を通して様々なご縁がありました。仏像の前に奉ってある糞掃衣は、来訪者が来るたびにお見せしています。手縫いの袈裟について知ってもらえれば」

 参加、布の寄付は随時募集中。石上さん(073・422・0308)。

写真=袈裟を縫う石上さん。下は糞掃衣

(ニュース和歌山/2017年10月21日更新)