ぶらくり丁のにぎわいを夢見て、地元の青年が10月20日、店を構えた。本町地区で生まれ育った池田勇太さん(23)。店内の8割をママチャリが占める昔ながらの自転車店で、その名も「ぶらくりじてんしゃ」。池田さんは「僕らはぶらくり丁がにぎわっていた時代を知りません。買い物ついでに気軽に寄れる店にし、町に来る人が増えるとうれしい」と目を輝かせる。

 1994年生まれ。両親から「丸正百貨店が人気で、ぶらくり丁は心斎橋みたいだった」と聞かされても実感はない。目に入るのは、人の少ない商店街。それでも、子どものころから、しばしば足を運んできた。

 5年前から実家近くの自転車店で修理やスポーツバイクの組み立てを担当した。仕事になじみ、いつしか「自分の店を出そう」との気持ちが大きくなり、頭に浮かんだのが、ぶらくり丁だ。

 かつて町のそこかしこにあった自転車店は、店主の高齢化やスーパーなどでの販売で、少なくなった。県自転車軽自動車商業協同組合の太田好昭理事長は「後継者でない人が開業するのは珍しい」と話す。

 ぶらくり丁周辺は今も学生、買い物の主婦をはじめ、自転車で走る人が多い。アーケードがあるため雨の日もぬれない。本町小や伏虎中跡に大学が来れば、さらに人が増えると考える。「学生のころ自転車でこの辺りを通った人は多い。車とは違う、懐かしい風景を見られます」

 周囲も歓迎する。介護用品店ヒシヨシを経営する冨上昌平さんは「若い人が店を開くだけで明るくなる。うちにも電動自転車の問い合わせがあるので、対応してもらえる」と顔をほころばせる。

 店周辺の付き合いを深める中、見た目にこだわった自転車に乗る人を知った。「服だけでなく、移動手段にもオシャレを求める人が増えると楽しい」。開店をきっかけに、若い世代が集うぶらくり丁へと思いをはせる。

写真=「ぶらくりじてんしゃ」をオープンした池田さん

(ニュース和歌山/2017年11月8日更新)