木目が美しいカウンターに、使い込まれたサイフォンで入れる深いコーヒーの香り。和歌山市本町で44年にわたり愛されてきたカフェぼへみあんが3月末で現店舗での営業を終える。初夏には西側10㍍の〝おとなり〟で再開する予定で、2代目店主の平岩彩さんは「開業時から来てくれるお客さんもおり、そういった方を大切にしながら若い人にも足を運んでもらえるお店に」と描く。

 父、秀之さんが1974年に開店。2年半かかって作り上げた内装はチーク材をふんだんに使い、奥の壁にそびえる木のレリーフは同市の工芸家が丹念に彫り上げた。

 かつての本町界わいはにぎわいの中心だった。ぶらくり丁や丸正百貨店への買い物客、サラリーマンにOL、宮井平安堂で買った本を楽しむ人らがひっきりなしにコーヒーを求めた。秀之さんは「まさに人、人、人でした。客席数34の店に、1日最高350人が訪れたこともありますよ」と振り返る。

 30歳でマスターとなり、42年が過ぎた2年前に引退。彩さんにバトンタッチした。建物の老朽化を受け、移転を決意したのは1年前。彩さんはこの空間を多くの人に覚えていてもらおうと、3月まで「ハローアゲインプロジェクト」と銘打ち、演奏会や朗読会を企画した。

 足しげく通う40代男性は「移転は寂しいですが、どういうお店になるのか楽しみ」と新生ぼへみあんに期待。彩さんは「働いていても落ち着くこの空間とコーヒーが好きでした。店の雰囲気を引き継ぐとはいえ、新たに始める不安はありますが、コクがあり苦すぎないコーヒーの味わいはそのままです」と笑顔を見せる。

 長い歳月をかけて街に溶け込んだ店。姿を変えても、愛される味はそのままに。注ぐ気持ちは、変わらず温かい。

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 ◎リーディングナイト=1月6日(土)午後6時半。元アナウンサーの池田香弥さんとナレーターの福山ひでみさんが朗読。1000円

 ◎フラメンコナイト=3月3日(土)午後7時半。舞踊家の知念響さんら7人が踊る。3000円。希望者は同店(073・431・9770)。

写真=常連客と談笑する彩さん(左)と秀之さん(中央)

(ニュース和歌山/2018年1月6日更新)