ソメイヨシノが絵巻のように咲き乱れ、かつては「新吉野」の名で桜の名所に数えられた和歌山市新和歌浦の高津子山が復活した。新和歌浦ロープウェー廃止で荒れた山を和歌の浦万葉薪能の会が16年かけ整備した。桜の季節には花見、散策の人でにぎわい、普段も憩いの場として親しまれる。同会は「最高の眺望を次世代に引き継ぎたい」と話している。

 

「高津子山 桜の山に」活動実る

和歌の浦万葉薪能の会 ボランティア16年

 高津子山は和歌浦漁港北西にある約150㍍の山で、萬波前の山道を北西に上がる。章魚頭姿山(たこずしやま)とも呼ばれ、昭和初期は「新吉野」の名で桜の名所として知られた。1960年に新和歌浦と高津子山山頂をつなぐロープウェーが開設され、年間40万人超が訪れる年もあったが、その後下火となり、97年に廃止。展望台は解体され、山は荒れた。

 和歌の浦万葉薪能の会は16年前、高津子山でウォーキングを開いた。「ツツジやススキが伸び、ツタが桜に巻き付き、眺望は遮られていた」と松本敬子代表(75)。

 「昔のような桜をもう一度」と整備する許可を所有者に得て、「高津子山を桜の山に」を合い言葉に会でボランティアを募り、同年から毎月第2日曜に手入れを始めた。樹木医の指導を受け、下草刈りを進め桜の根元に光を導き、伸びた枝を切り、眺望を開いた。

 桜には肥料を与え、遊歩道の清掃を重ねた。山は美しくなり、春には満開の桜が映えるように。桜のトンネルも見事で、頂上付近は和歌浦漁港、名草山、水軒と360度開けた眺望にピンクの花が彩りをそえる。

 同市の巨海(こみ)重和さん(79)は「最初はツタが絡んで桜がかわいそうでした」。一人で訪れ作業するほど熱心で、「中辺路の里山を遊び場に育ったので、子どものころを思い出します。『気持ちよくなった。ありがとう』と声をかけてもらえ、うれしい」。大林俊雄さん(72)は「紀の川市名手出身で、町内会からここに花見に来るほど有名だった。今は知る人が少なく残念」と語る。

 花見に限らず、散策、トレーニング、初日の出スポットとしても人気は上昇中だ。毎日歩きに来る澤口博一さん(78)は「憩いの場所です。私は徳島出身で望郷の念を抱き四国を眺めていますよ」。

 悩みはボランティアの高齢化で、平均年齢70歳に及ぶ。松本代表は「桜は元気になった。この美しさを守るため若い人に参加してほしい」。佐野芳秀理事(63)は「最高の眺望です。和歌山と言えばここという場所になりたい」と力を込める。

 ※なお、高津子山入り口へは和歌浦漁港の有料駐車場を利用し、30分程度歩かねばならない。

写真上=満開時には360度の眺望を桜の花が彩る(昨年の様子)、同下寒さにも負けず、清掃に熱

高津子山を歩いてみませんか

 4月8日(日)午後1時半、和歌浦天満宮集合。無料。4月15日、5月20日各日曜午前9時半から清掃と整備ボランティア。同会(073・444・2492)。

(ニュース和歌山/2018年3月17日更新)