脳出血乗り越え言葉紡ぐ

 和歌山市の秋野かよ子さん(72、写真)が4冊目の詩集『夜が響く』を3月4日に出版した。40代で脳出血に襲われ、今も後遺症のため読み書きがままならないが、創作を続け、2年に1冊のペースで詩集を編んでいる。「和歌山の歴史や自然をうたいました。普段、詩を読まない人にこそ読んでほしい」と話す。

 京都や和歌山のろう学校で教諭を務めた秋野さん。多忙な業務に追われていた45歳の時、会議中に突然意識を失った。すぐに病院へ運ばれ一命を取り留めたが、しゃべれず、文章を読めない状態に。しかし、積極的に外に出て手話で人とかかわり、少しずつ言語能力を取り戻し、3年かけて職場に復帰した。

 55歳で早期退職し、友人に誘われ俳句を始めた。字数の制限がしっくり来ず、より自由な表現を求めて8年前に詩に替えると、作品を書くのが日課に。何百とたまった詩をまとめようと2012年から詩集を出版している。前作までは自然をテーマにした抽象的な作品が多かったが、今回は県内の地名をいくつも折り込み、終戦直後の社会を描いた作品も入れた。

 アメリカ大陸に移民として渡った伯父が帰省した時の思い出を振り返る『むかしの小さい記録簿』、御坊の浜辺に咲くハマボウに語りかける『黄色い花』、白が映える海岸の岩肌を鬼の歯になぞらえた『鬼︱白崎海岸の辺り』など31編を収録。「詩を書くのを手話では〝心を書く〟と表します。心が形になって残るのはうれしい。まだまだ表現したいことは尽きません」

 A5判、128㌻。1620円。アマゾンで購入可。コールサック社(03・5944・3258)。

(ニュース和歌山/2018年3月31日更新)