2009年に発行され、完売していた『城下町の風景 カラーでよむ「紀伊国名所図会」』が装い新たに〝増補精彩版〟として5月19日(土)、ニュース和歌山から刊行される。江戸時代の史料に残る白黒絵図に着色する大胆な発想と、今の街並みに重なる30枚の絵図が好評で、復刊を求める声が多数寄せられていた。今回は「より精緻に色鮮やかに」を目指し、すべての絵図を塗り直した。付録として近年、観光客が増える加太の絵図を収録。和歌山の魅力がより鮮明な一冊となった。

 『城下町の風景』は、江戸時代の観光案内書と言える「紀伊国名所図会」の絵図に和歌山市の芝田浩子さん(写真左)が色を付け、絵に描かれた庶民の暮らしや歴史的背景を同市立博物館前館長の額田雅裕さん(同右)が読み解く。08〜09年に本紙で連載した内容をまとめ、現在の写真や古地図を合わせ09年に刊行し、城下町和歌山の今昔を体感できると話題になった。

 彩色によって武士や庶民の姿が生き生き浮かび、城下町の情緒がにじみ出た絵図は、町歩きに活用されるのをはじめ、和歌山市のイベントや、テレビ、新聞の歴史特集のイメージ画に多数用いられている。わかやま歴史館の画像案内「城下町わかやま歴史散歩」でも利用され、城下町和歌山のイメージ発信に一役買う。和歌山歴史地理研究会の町歩きで資料に使う額田さんは「絵を見てもらうと、参加者に当時の城下町をイメージしてもらえる。言葉より伝わりやすい」。

 今回はただの復刊ではなく、増補精彩版と掲げ、旧版の30枚の絵を芝田さんがすべて塗り直した。芝田さんは「細かく塗り分けるほど発見があり、小さい人をとっても表情や動きがあるのに驚かされます。絵に負けないように塗りました」。

写真中=三年坂、同下=京橋の絵図

 

全絵図刷新 加太を追加

 また、近年人気が高まる加太の風景を付録に加えた。淡路街道沿いの海岸、海苔とワカメの収穫(写真)、友ヶ島の3カットで、江戸期の加太の姿が残る史料も合わせた。額田さんは「今につながる美しさ、淡路・四国へ渡る交通の要所だった加太を知ってもらえます」。

 「カラーでよむ紀伊国名所図会」のシリーズは12年に『和歌浦の風景』、16年に『城下町の風景Ⅱ』と続いた。「精彩版と『Ⅱ』を合わせると、名所図会の城下町の絵はすべて網羅されます」と額田さん。「庶民の暮らしは文字に残りにくく、絵から発見できることは多い。後の発掘や研究で絵と符合することが出てくる可能性があり、今後、分かることもあると思います」と語る。

 芝田さんは「5月5日に開かれたけやき大通りのディズニーのパレードはすごい人出でしたが、絵から当時の大都市ぶりが分かります。豊かな色彩はそのにぎわいの表現です」と話している。

 A4判、72㌻。1296円。ニュース和歌山HP、アマゾンで販売。ニュース和歌山(073・433・4882)。

 

『増補精彩版 城下町の風景』取り扱い店

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(ニュース和歌山/2018年5月19日更新)