工房あせりな 6月3日 うちわ作り体験会

 桜の枝や柿の葉、シュロ…。紀美野町釜滝の工房あせりなには、里山の草木で染めた優しい色合いの和紙が並ぶ。紙すき職人の西森三洋さん(49)が、日本古来の材料と製法で手すきした作品だ。和紙を使った小物を作る妻の有紀さん(50)と、6月3日(日)に海南市黒江地区で開かれる黒江めった祭りでうちわ作りの体験会を開く。三洋さんは「強さの中にやわらかさがある、昔ながらの和紙にふれて」と語る。

 大阪出身の三洋さんが和紙に出合ったのは30歳の時。それまでの7年間は溶接工をしていたが、「鉄より自然のもので仕事がしたい」と、富山にある工房の門をたたいた。新潟でも修業を重ね、2011年に福島で独立。黒江出身の有紀さんとの結婚を機に16年、釜滝へ移住した。

 パルプや漂白剤を混ぜて作る和紙もある中、自然素材100%を貫く。原料となる植物、こうぞの皮を削り、大釜で3時間煮た後、細かいゴミを根気よく取り除き、繊維をほぐす。これにトロロアオイの粘液を加えて釜滝の沢の水を使ってすく。手すきしたこうぞの和紙は強度が高く、「障子だと20~30年は破れません」と三洋さん。

 染色は釜滝がある志賀野地域の植物を。桜の枝は淡いピンク、シュロの葉は菜の花のような黄色が出る。三洋さんは「土地の空気や水、季節や温度で出来上がりが変わるのが、天然ならではの面白さ」とほほ笑む。

 完成した和紙は、障子や美術紙、ランプシェードに使うほか、東京のディスプレー会社で24年間働いた有紀さんが、こんにゃく粉で耐久性を高め、小銭入れやポーチ、ふくさを作る。有紀さんは「一枚一枚表情が違い、五感に訴えかけるものがある」と話す。

 現在、志賀野でこうぞを栽培しており、3年後に収穫を見込む。三洋さんは「この地域のブランド和紙をつくり、地域活性化の役に立てれば」と描いている。

 うちわ作り体験会は、3日午前10時~午後4時、海南市船尾のうるわし館。1100円~。同工房(073・488・1168)。 

写真=手すきした和紙でうちわ作りを

(ニュース和歌山/2018年6月2日更新)