平安後期作 本殿床下で安置

 海南市大野中の春日神社が所有する平安時代後期作の毘沙門天立像(写真)が、6月10日㊐午前10時から同神社で開かれる「大塔の宮十番頭祭」で初めて一般公開される。

 仏像は本殿の床下に長年、安置されていたもの。三上秀信宮司によると、江戸時代の地誌書『紀伊国名所図会』には本殿のすぐ前に釈迦堂が描かれているが、今はなく、明治時代の廃仏毀釈で壊されたと見られる。「この像だけなぜ床下に隠したのか、何か意味があったと思われますが、不思議です」と三上宮司。

 県立博物館主査学芸員の大河内智之さんが確認したところ、穏やかな表情や体形などから平安後期に作られたと考えられる。「その時代から寺院と習合していたことが分かります。明治政府により神仏分離が進められた150年前の、信仰の場を守る思いが見られる興味深い事例」と話す。

 10日は、同じく同神社に伝わる仏画「厳島姫神並に二十五童子絵像絹地巻軸」も初披露。絹の荒さやおおらかな画風から、戦国時代ごろに描かれたと推測される。神社の歴史を物語るこの2点について大河内さんが解説する。

 郷土史講座の後、現在の海南市と和歌山市南部を中世に統治した豪族で、同神社の神主を務めた大野十番頭の子孫が祝詞を上げる。無料。申し込み不要。同神社(073・483・7547)。

(ニュース和歌山/2018年6月9日更新)