地域と学校をつなぐ「きのくにコミュニティスクール」の導入が和歌山県内公立学校で進んでいる。コミュニティ・スクールは学校に学校運営協議会を置き、保護者、地域、企業などの代表が委員となり、運営に参画する仕組みで、文部科学省が推進。和歌山は地域が学校の支援を担う「きのくに共育コミュニティ」と両輪で来年度までに公立全校で取り入れる。組織率は全国2位で、県教委は「多くの人が教育への当事者意識を持つ一歩にしたい」と話している。

和歌山県 コミュニティ・スクール導入率全国2位〜〝当事者意識〟持つ一歩に

 コミュニティ・スクールは距離が生じている学校、地域、家庭の関係を改めるのが目的で、学校に市町村教委が任命した委員による学校運営協議会を置き、会議を開催。学校と地域が目標を共有し、どのような子どもを育てたいのか話し合う。和歌山では来年度までの完全導入を決めた。

 和歌山市立高松小では自治会長、民生委員、高校校長ら9人を委員に昨年発足。今年度は6月に開き、学校の方針や重点目標を示した。通学の見守りなど従来から地域は協力的で、十河(そごう)秀彰校長は「学校への関心の高さを感じます。やろうとしていることが可視化でき、自信を持って取り組めます」。委員の高松地区公民館長、小河典子さんは「昨秋に子ども、地域の人が参加する展示会を始め、今年も続けます。高校生や普段学校へ来る機会のない方に来てもらえる。開かれた学校づくりにつなげたい」と語る。

 海南市立巽中には、巽小、幼稚園を含む形で巽中学校区学校運営協議会が発足した。同地区は、地域団体の活動が盛んで、委員も子どもを育てる会会員ら積極的な人が目立つ。同地区には7月に小学4〜6年生が地区の人と2泊3日で公民館に泊まり、生活体験をする通学合宿があり、また青少年育成補導協議会の会員が毎日小学1年生を送って帰る。浅野一起校長は「モデル的なあり方が既にある。幼稚園、小学校とともに地域の声を聞けるようになり、連携はより深まります」。

 高校となると、少し事情は違う。桐蔭高では、保護者、学識経験者ら8人が委員を務める。13日に第2回会議を開き(写真)、学校がキャリア教育、学科改編の方向性を説明し、キャリア教育の具体的な試みや授業時間確保に意見が交わされた。清水博行校長は「学科改編を含む長期ビジョンも協議会の議論を経て承認頂いた。外部の意見が運営に反映され、重みも違ってきます」。協議会会長で弁護士の波床昌則さんは「我々の意見を生かしたいとの姿勢を学校に感じる。学校を育てるのは地域の責任。あこがれられる学校であるよう力になりたい」と望む。

 和歌山県の導入率は59・9%と、山口に次ぎ全国2位。このため文科省主催の全国フォーラムの開催地に選ばれた(下記参照)。県教委は「和歌山では地域が学校を支える風土が培われてきた」とし、「全小中高がコミュニティ・スクールとなると個々の学校では完結しない課題に対応でき、学校間のつながりも深まる。協議会は機能させることが大事で、熟議が欠かせません」と話している。

地域とともにある学校づくり推進フォーラム

 8月23日(木)午前10時、和歌山県民文化会館大ホール。
 宮下和己県教育長が「きのくにコミュニティスクール」について話した後、秋田県由利本荘市教育委員会の佐々田亨三教育長が「コミュニティ・スクールが培う子どもたちの力」をテーマに講演。「ふるさとの未来を託せる子どもを育てるために」と題した討論もある。
 無料。希望者は文部科学省HPから予約する。県教委総務課(073・441・3641)。

(ニュース和歌山/2018年7月28日更新)