元小学校教諭で現在、難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)と闘う橋本市の保田俊和さん(62)が10月27日(土)、母校の粉河高校(紀の川市粉河)で公開授業を行う。発症から8年、病気が進行し体力は落ちたものの、高校生のサポートを受けて教壇へ。「最後の授業になるかも知れませんが、得意だった理科の授業を、後輩と一緒にします。身の回りの物事に興味を持ち、疑問を抱く楽しさを伝えたい」と意気込む。

保田俊和さん 10月27日 母校・粉河高校で

 紀の川市で小学校教員をしていた2010年、大みそかに年越しそばを食べていると、急にはしを握る手に力が入らなくなった。精密検査を受けたところ、全身の筋肉が衰え、最終的に呼吸困難になる難病、ALSと診断された。

 同時期に保田さんの親も介護が必要になり、11年に退職。医師から「2年で寝たきりに」と聞かされた後、病状は進行し、車いす生活が始まり、睡眠中は人工呼吸器が欠かせなくなった。

 授業は、保田さんを担当する訪問看護師、大田智子さん(44)が発案。粉河高PTAの副会長でもある大田さんは、地域と高校が共同で取り組むKOKO塾の一環で、福祉を学ぶ生徒の力を借りて授業を開こうと考えた。大田さんは「病気と闘いながら教員を務めた保田さんの話は、生徒の学びにつながる。早期退職した保田さんにとっても、やり残したことができる機会になり、元気がわいてくるはず」と期待する。

 12日には生徒7人が保田さん宅を訪問。授業で行う果物を使った発電実験のリハーサルを行い、水蒸気の力で進むポンポン船を試作した。ALSや身体の状態について聞いた1年の木村羽伽(わか)さんは「近所のおじいさんを支える人たちの姿を見て、理学療法士を目指すようになりました。実際に病気の人の力になれるのがうれしい」と張り切る。

 保田さんは「死ぬのが一番楽だと思った時もありましたが、たくさんの人の支えで前向きに生きようと思うようになりました。だれもがいつ、病気になり、事故に遭うか分からない。懸命に生き、夢をつかむきっかけにしてほしい」と望んでいる。

 27日は午前10時から。無料。申し込み不要。同校(0736・73・3411)。

写真=実験のリハーサルを見守る保田さん(左から2人目)

(ニュース和歌山/2018年10月20日更新)