円盤を投げるフライングディスクと、〝床の上のカーリング〟と呼ばれるボッチャを組み合わせたニュースポーツ「フライング∞(エイト)」を、和歌山市北出島の高齢者向けデイサービス施設「輝楽魂やすらぎの家」利用者と職員が編み出した。世代や障害を越えて楽しめるよう普及を目指しており、施設を運営するNPO「みんなで はーとtoわん」の北山尋唯(ひろただ)理事長(50)は「地域で元気に暮らすためのゲーム。笑顔で楽しむことが一番のリハビリになる」と魅力を話す。

高齢者デイ利用者と職員 戦後の遊びヒントに創作

 円盤を3~5㍍離れた点数マットに投げ、合計得点を競うフライング∞。マットは1~5点に色分けしており、円盤が着地後にすべったり、転がったりするのを見込んで投げるのがポイントだ。施設利用者の上根美代子さん(86)は「どこで円盤が止まるかワクワクします。みんなで楽しめるのが一番ですね」と笑顔を見せる。

 発案したのは、利用者で地元老人会会長の富永禎美(よしみ)さん(87)。同地区で生まれ育った富永さんは終戦時、焼け野原の中、ガレキの中にあった屋根瓦をおもちゃに遊んだ。「『瓦割り』と言って、ある程度離れた場所に並べた瓦に向け、瓦を投げて当てる遊びです。おもちゃがなかったので、日が沈むまで毎日のようにしました」と懐かしむ。

 瓦割りを思い出したのは25年前。定年退職し、何か地域に貢献できないかと考える中で心に浮かび、瓦を円盤に持ち替え、ブルーシートに点数を書いて得点を重ねる形にアレンジした。紹介する機会に恵まれなかったが、昨年通い始めた同施設で北山さんに話すと、「だれでも楽しめる」と共感を得て、今年5月に北山さんとフライング∞推進委員会を立ち上げた。

 9月には同市北出島の東公園体育館で初の体験会を開催。子ども、お年寄り、障害者ら約130人が集まった。優勝したのは、4年前に事故で両足の膝から下を失った松浦洋一さん(63)。「足が不自由になってからスポーツはあきらめていました。コツをつかめばだれでも優勝を狙えるチャンスがあり、勝ち進むと楽しみが増します」と喜ぶ。

 今後、体験会を重ね、競技人口を増やしていく計画。富永さんは「円盤があれば、いつでもどこでも安価に楽しめる。屋外ですれば風で円盤の軌道が読みにくくなって、もっと楽しくなりますよ」と勧め、「集中力がついて運動にもなる。来年和歌山で開かれるねんりんピックの選手に紹介したい」と描く。

 北山さんは「名前の『∞』には、人のつながりを無限大に広げていってほしいとの願いをこめました。南海トラフ地震など災害と向き合う和歌山で、孤立を防ぎ、顔見知りになれるツールとして地域の防災にも役立ててほしい」と望んでいる。

 体験希望は同施設(073・419・1821)。

写真=フライング∞を楽しむやすらぎの家利用者たち

(ニュース和歌山/2018年12月8日更新)