2018年度〝現代の名工〟林伸昭社長に聞く

 理美容師に欠かせないハサミをオーダーメイドで仕上げる和歌山市手平のハヤシ・シザース。従来品では半年おきに必要だった研ぎ直し作業までの間隔を延ばす努力を続け、メンテナンスが3年以上必要ない製品の開発に成功した。その技術が認められ、今年度の〝現代の名工〟として厚生労働大臣表彰を受けた林伸昭社長(58)に話を聞いた。

──卓越した技術を持つ〝現代の名工〟に選ばれました。

 「創業して27年、職人になって38年間、理美容師さんに喜んでもらえるようにとの思いで取り組んできました。指を入れるハンドル部分と刃に分け、常時2000以上のパーツをそろえており、一人ひとりの手の大きさ、指の太さを調べ、希望やこだわりを聞いて、世界に一つだけのハサミを提供しています。続けてきたこの姿勢が認められたと喜んでいます」

──表彰を受けた大きな理由が、メンテナンスフリーのハサミを開発したことだそうですね。

 「ハサミは定期的に研がなければなりません。耐摩耗性の高い、硬い金属は長持ちする一方、靭性、つまりねばり強さがない。はさみの刃は横から見た時、内側に微妙な丸みを持たせる必要があり、手作業でハンマーを使ってたたくんですが、硬度が高いと割れるんです。そこで、靭性のあるものを母材とし、金属を切ったり削ったりする工具の材料である高硬度の粉末ハイス鋼を刃の部分に溶接する技術の開発に成功しました」

──柔軟性と耐摩耗性が両立できたんですね。

 「耐久性試験用の機械も自社開発しました。超カリスマ美容師が1日20人、月に20日使った場合でも、3年間は大丈夫との結果が出ました」

──今後の夢は。

 「もの自体はできましたが、量産体制がまだ。今年中には整えたい。家電同様、理美容バサミも海外メーカーが追いかけてきていますので、技術開発は続けます。日本はものづくり大国。職人の遺伝子が備わっていると思っています。私が身につけた技を若い子に伝え、将来、〝現代の名工〟に選ばれるような後継者を育てたいですね」

(ニュース和歌山/2019年3月23日更新)