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  深刻な過疎化が進む海南市下津町の港町、大崎地区で地域おこしに取り組むげんき大崎が2月14日(土)、活動拠点となる特産物販売所、げんき大崎館「かざまち」をオープンする。足赤エビやワカメなどの海産物、野菜に果物、総菜を販売する一方、地域の高齢者に向け、長く親しんだ地元の食材を使った配食サービスにも乗り出す予定だ。豊かな食の魅力を地域外に発信するだけでなく、地元でもかみしめる試み。山中誠也館長は「かざまちを拠点に、大崎をずっと暮らし続けられる地域にしていきたい」と意気込んでいる。

 エメラルドグリーンの湾を囲み、みかん山沿いに民家が並ぶ穏やかな漁村、大崎。万葉集に詠まれる風光明びな地だが、交通の不便さがネックとなり、急速な過疎化と高齢化が進んでいる。

  2012年、大崎小学校は全校児童6人で閉校。ピーク時に40そうあった底引き網の漁船は4そうに減少した。現在暮らす187世帯中、高齢者のみの世帯は66世帯で、うち32世帯が一人暮らしだ。生鮮食品店は2年前に閉店。車の免許を持たない高齢者が山を越えたスーパーに行くにはタクシーや1日3本のコミュニティバスに頼らざるを得ない。

 げんき大崎は、過疎化に歯止めをかけようと地区長が中心となり08年に発足。資源ゴミの回収で得た資金で、ワカメの刈り取り体験や海老とイカのイタリア料理教室などを開き、地元の食材をアピールしてきた。「『新鮮でおいしい』と好評で、毎回県内外から定員を超える応募がある」と同会の西川展子さん。リピーターも多く、活動が定着してきたことから拠点をつくろうと2年前、「かざまち」設立を考えた。

 7年間の実績が認められ、拠点設立の事業案は昨年、総務省の過疎集落等自立再生対策事業に選ばれた。30年間使われていなかった漁協の倉庫を補助金で改修した。1階は販売所と加工品の調理場、2階が交流スペースで、海が一望でき、婚活イベントや宴会場としても開放する。

 1月のテスト販売では鮮魚に釜揚げひじきのほか、海老コロッケ、サワラの天ぷらの総菜、みかんや金柑など大崎の特産品を並べ、開店前から行列ができた。訪れた大崎の78歳女性は「一人暮らしの高齢者はおかずを作るのも大変で総菜は助かる」、和歌山市から来た上木直人さんは「初めて来たが、鮮魚の料理法を丁寧に教えてくれ、アットホームで良い所。2月14日のオープンが待ち遠しい」と語る。

 総菜を作るげんき大崎加工部メンバーは17人で、6、70代の主婦が中心。地域外への発信だけでなく、今後は地元の高齢者向けに弁当の宅配も始める計画だ。身体に優しいをコンセプトに、小海老やひじきなど住民が食べ慣れた食材で郷土の味を提供する。同部責任者の松江照代さんは「これまで大崎でお世話になったので地元に恩返ししたい。それぞれが得意なことを生かして助け合えれば」と笑顔を見せる。

 県内の過疎地域は山間部がクローズアップされがちだが昨年、海に面する湯浅町、印南町も総務省から過疎地域に追加指定された。県過疎対策課振興推進班の神﨑進班長は「国道42号、鉄道の走る沿岸部は比較的、注視されなかった。海の資源を生かし、高齢者の支援をする大崎の取り組みは今後、過疎に悩む海沿い集落のモデルになるのでは」とみている。

げんき大崎館 「かざまち」

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所在地:海南市下津町大崎833-5
時間:毎週土曜午前10時〜午後2時
電話:073・492・2130 
駐車場:有り 2月14日(土)午前10時にオープニングセレモニー、海鮮汁のふるまいも。

(ニュース和歌山2015年2月7日号掲載)